軍隊なき世界

2213年8月15日

日本では、今日は「終戦の日」のはずです。「はず」というのは、23世紀の現在、もはやこの日が「終戦の日」として意識されることはほとんどないからです。歴史健忘症?と思われるかもしれません。

しかし、終戦の1945年からすでに268年。これだけの年月が経つと、大きな出来事もさすがに歴史書の中の存在と化します。今や第二次世界大戦は「近世史」の出来事として扱われています。

実際、23世紀人にとっては「世界大戦」ということ自体、想像を超えています。今、世界には軍隊がありません。もう少し正確に言うと、国家ごとの国民武力としての国軍組織が存在しません。現在、かつての国家に当たるのは領域圏と呼ばれる政治単位ですが、すべての領域圏は軍隊の保有を禁止されているのです。

これはおよそ100年前の世界連続革命後に設立された世界共同体の憲章において、世界の法として定められていることです。カントが理想とした常備軍廃止による恒久平和がようやく実現されたのです。ただし、二つの留保が必要です。

一つは全領域圏で構成する世界共同体が保持する警察軍の存在です。この警察軍とは名称のとおり治安警備が任務ですが、通常の警察よりも重武装であることが特徴です。これは今でも局地的には発生し得る武力紛争の解決のために常備されている武装組織ですが、紛争自体が少ないため、要員数は10万人ほどで、出動はまれです。

もう一つはやはり世界共同体が保持する航空宇宙警戒軍の存在です。これは警察軍よりは通常の軍―特に空軍―に近い武装組織です。要員数も80万人と多く、世界各領域圏から要員が選抜されています。この組織の任務は宇宙空間からの落下物の破砕や、他の惑星からの攻撃への備えです。後者については説明を要するでしょう。

現在でも、他の惑星に知的生物が生存することの確証は得られていませんが、宇宙観測の進歩により、他の惑星に知的生物が生存する可能性について、世界の科学者たちの見解はかなりポジティブになっています。そのため、万が一他の惑星から地球が攻撃を受けた場合に備えて、こうした一種の防空部隊を常備しているのです。

このように恒久平和の理想は実現されているのですが、同時に現実的な事態に想定した備えも怠らないわけです。これもまた、未来世界では理想と現実が統一されていることの端的な現れだと言えるでしょう。
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by komunisto | 2013-08-15 11:54 | 政治