23世紀のアメリカ

2213年9月11日

20世紀から21世紀にかけて“世界の保安官”として最強の軍隊を擁し、世界に君臨した資本主義総本山の「帝国」アメリカ合衆国。ですが、23世紀の現在、アメリカはもう存在しません。というより、分裂したと言うほうが正確かもしれません。

現在の旧アメリカは、おおむね北部が(一部南部を含み込む形で)旧カナダと合併して「北アメリカ連合領域圏」にまとまり、南部・南西部の旧メキシコ領土だったカリフォルニアやテキサスを中心に旧メキシコと合併して「アメヒコ連合領域圏」にまとまっているのです。後者の「アメヒコ」とはアメリカとメキシコのスペイン語読みメヒコを合成した名称です。

旧アメリカでは21世紀後半以降、主にメキシコなど中米にルーツを持つヒスパニック系人口が増大し、22世紀になると、特に南部・南西部では人口比で最多となりました。しかしヒスパニック系は人口がどれほど増えようとも貧困層が多く、経済的利権はヨーロッパ系富裕層に握られていました。 

そうした中、主としてヒスパニック系が中心となって、21世紀末に世界連続革命の起爆剤となる最初の革命がアメリカで発生し、次いで多くのヒスパニック系の郷里である南隣のメキシコへも波及しました。

これにより、一旦は旧アメリカ合衆国が総体として「アメリカ連合領域圏」へ移行したのですが、革命終息後に分裂が起き、すでにヒスパニック系が多数派となっていた南部・南西部の旧メキシコ領土地域はメキシコとの合併を望んだのです。一方で、依然としてヨーロッパ系が多数を占めていた北部を中心とする諸地域は、元来ヨーロッパ系主体の北隣カナダとの合併を希望しました。

ここでアメリカにとっては言わば歴史上二度目の「南北戦争」とも言える事態となったのでしたが、19世紀のそれとは異なり、軍事的な衝突には至らず、論戦を経て住民投票の結果、平和裏に分離が決まりました。

ちなみに「連合領域圏」とは、旧アメリカや旧メキシコのように連邦制の伝統の強い地域で採られている構成で、独自の憲法を持ち強い内政自治権を保障された「準領域圏」が連合して一つの連邦的な「連合領域圏」を構成する体制です。この点では北アメリカもアメヒコもともに連合領域圏として共通しています。

こうしておおむね北と南に分離した旧アメリカはもはや「帝国」ではなく、ともに世界共同体を構成する73の領域圏の一つにすぎません。世界から軍隊が廃止され、恒久平和の時代に入った今や、“世界の保安官”の役目も終わりました。

ただ、北アメリカ連合領域圏は大雑把に言えば「旧アメリカ+旧カナダ」という構成のため「先進地域」の性格は残り、実際、科学技術やその他の学術全般では依然として世界をリードする存在であり続けています。

一方のアメヒコ連合領域圏は実質上世界連続革命の生みの親のような立場で世界から尊敬を集めており、その動向は世界共同体においても一定の重みを持っていますが、その地位はもちろん「帝国」と呼ぶべきような覇権的なものではありません。
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by komunisto | 2013-09-11 08:48 | 政治