オール水素自動車

2213年9月23日

「水素社会」というキーワードは21世紀にも盛んに登場していましたが、23世紀の現在、日頃格別に意識されないほど水素の活用は一般化されているため、「水素社会」などという用語が使われることはありません。

なかでも、自動車です。23世紀の自動車はすべて燃料電池車です。燃料電池は水素と酸素の化合によって発電する仕組みで、充電が必要だった旧型電気自動車に比べても、環境的持続可能性を含めた総合エネルギー効率は良好です。

こうした燃料電池車自体はすでに私が旧世界にいた21世紀初頭には開発されていましたが、まだ希少車で、自動車と言えば圧倒的にガソリン車でした。23世紀の未来世界では、ガソリン車は環境的持続可能性を欠く悪しきクラシックカーとして記憶されています。

燃料電池自動車の一世代前には充電式電気自動車がありましたが、充電が必要なことや走行距離の短さといった限界があったところ、燃料電池車はこれらの限界を乗り越えたのです。

実際のところ、燃料電池車の優位性は21世紀から認識されていたのですが、水素の生産・運搬・貯蔵等に関わるインフラ整備にかかる多額のコスト、ひいては商品水素の末端価格の高額化がネックとなって、普及の実現可能性は乏しいと見られていたのでした。

要するに、資本主義時代ではあらゆる分野でぶつかったカネの問題です。しかし、貨幣経済が廃止されたことにより、こうしたカネにまつわるネックは完全にクリアーされたのです。

こうして自動車=水素自動車となって、高速道路沿いで見慣れたガソリンスタンドは消滅しました。その代わりになるのは、水素スタンドです。形はガソリンスタンドに似ていますが、水素スタンドはその名のとおり、燃料電池自動車に水素を供給する施設です。

もっとも、オール水素電池車といっても、23世紀世界はもはやクルマ社会ではありませんから、自動車の保有台数自体が減少しています。特に自家用車は量産されておらず、個人が好みの型やデザインで発注する注文生産方式によっています。

路線バスは路面電車やライトレールに転換されている例が多く、地方市町村部の停留所を持たないコミュニティーバスでの活用が主となっています。長距離バスは無料で乗り放題の電車や飛行機で代替され、一部観光目的のチャーターバスを除き、ほぼ廃れました。

21世紀に展望されていたように、ガソリン車が平行移動的に電動車に置き換わるというような単純な話ではないわけです。かくして23世紀のオール水素自動車化は、さらに未来のノー自動車化への道なのかもしれません。
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by komunisto | 2013-09-23 10:50 | 環境