消えた摩天楼

2213年12月1日

23世紀の情景は、何気なく見ると200年前と大差ないのですが、仔細に見れば相違点があります。その相違の一つに、超高層建築物の消失があります。

東京でもかつて「都心」とか「副都心」と呼ばれた超高層ビル街は消えてなくなっているのです。理由は、今や全土的に適用される景観保護法という法律が存在し、高さ60メートルから100メートルの範囲内で、各市町村に地区ごとの景観に応じた建築物の高さ制限を義務づけているからです。

ということは、原則として100メートルを超える建築物はもはや日本に一つもないことになります。今、日本で一番高い建築物は、東京湾岸に建てられた展望台です。これは景観制限の例外扱いですが、それでも200年前に日本一の高さを誇ったスカイツリーより低い約400メートルにすぎません。

ちなみにスカイツリーはもう120年近くも前に取り壊され、跡地と周辺は植生豊かな緑地公園になっています。付近の住民もここに昔超高層タワーがあったらしいという伝説を知る程度です。

住宅に関しては、消防・防災の観点から50メートルを超える高層建築が全土一律に禁止されているため、かつて人気だったタワーマンションも存在しません。階数にすると、マンションはせいぜい12階止まりです。

こうした超高層建築物の消失は世界的な現象となっており、200年前には世界随一の摩天楼都市であったニューヨークですらも、超高層ビルは消失しています。ニューヨークでも高さ制限がかかっているようです。

200年前の超高層ビル街などの写真は今でも残されていますが、23世紀人に感想を聞くと、「無駄」「奇怪」「恐怖」等々のネガティブな答えが多く、あこがれるという人はわずかです。

かつての超高層建築物は資本主義的近代化の象徴でもあったわけですが、資本主義の終焉とともに摩天楼も姿を消したことは必然なのでしょう。 
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by komunisto | 2013-12-01 13:30 | 社会