23世紀の「外交」

2214年3月3日

21世紀初頭の世界では、様々な外交的課題が噴出していましたが、どれも解決困難に直面していました。その原因は、各国家が互いに国益を主張し合っていたことでした。23世紀の世界では、このような国益追求競争は消滅しています。

その理由は、すでに幾度か報告しているように、23世紀の世界に国家というものが存在しないためです。国家は領域圏というおおまかな政治単位に置き換えられたうえ、世界共同体という世界組織に統合されました。その結果、いわゆる外交というもののあり方も大きく変わっています。

現在の「外交」とは国益を賭けた国家間の駆け引きではなく、世界共同体の運営そのものです。つまり、世界共同体に属する領域圏間の調整問題にすぎないのです。そのため、外交官という職も大きく変わっています。

23世紀の外交官とは、国に雇用された外務公務員ではなく、世界共同体の協商担当職員です。在外公館というものもなく、各領域圏には世界共同体の代表部が置かれています。外務省に相当する官庁もなく、外交的な問題は内閣に相当する領域圏民衆会議の政務理事会が直担します。

ただし、かつての国際連合大使に相当する職として、各領域圏は旧国連総会に相当する世界民衆会議に大使代議員を送り込んでいます。この職は各領域圏の民衆会議が選出する領域圏の代表者として、世界民衆会議で各領域圏を代表して討議・表決に関わります。

なお、世界共同体は五つの大きなまとまりごとに、環域圏というリージョナルな支分領に分かれており、各領域圏にはこの環域圏の代表事務所が置かれる一方、各領域圏は環域圏民衆会議にも大使代議員を送り込んでいます。

こうして、23世紀の外交は、すべて世界共同体及び環域圏の枠内で、競争的ではなく調整的に処理されていくのです。そのため、「外交」という用語も今日では歴史的なものとなっており、「協商」という言い方が好まれています。

ちなみに現在、世界共同体に属する領域圏は73あるのですが、これでも調整的な協商を行うには多すぎ、しばしば領域圏間の摩擦の原因となっているという指摘もあり、地域統合的な五つの環域圏の役割がより重視されるようになっています。
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by komunisto | 2014-03-03 10:40 | 政治