科学者が捜査官

2214年6月18日

21世紀初頭の刑事ドラマでは科学捜査班の活躍を中心にしたものが流行のようになっていました。当時はあくまでもドラマですから、実際の犯罪捜査で科学捜査が中心になるようなことはなく、捜査の主流は旧来の取調べ中心の司法捜査でした。

200年後の現在では、かつてのドラマの世界が現実のものとなっています。法律上も「科学捜査先行の原則」が明記されており、取調べを中心とする司法捜査の前に、物証の収集とその科学的な分析評価を先行させなければなりません。

こうした原則に基づいて、警察には科学捜査課/部が独立した部署として設置されているのです。これは昔の鑑識課に当たるものですが、より専門的です。

まず科学捜査を担当するのは一般の警察官ではなく、科学者としての経歴を持つ科学捜査官と呼ばれる特別捜査官です。かれらは心理学を含む様々な科学を専門とする科学者であり、警察官とは別枠で採用され、警察官のような階級も持ちません。当然警察の他部署に配属されることはなく、科学捜査部門専従です。

他殺体が発見されたような場合は、まずこうした科学捜査官が先行して物証の収集・分析を行い、犯人像の心理学的なプロファイリングも行った上で、被疑者を絞り込み、司法捜査に移るという段取りとなります。その結果、昔のように強引な取調べで自白を迫るような捜査手法は消滅しています。

被疑者の取り調べに当たっても、その性格の心理学的な分析に基づく取調べ計画が立てられ、場合によっては心理学専攻の科学捜査官が取調べに立ち会うこともあります。否認する被疑者を刑事が取り囲んで怒鳴りつけるような乱暴な取調べはあり得ません。

ちなみに、変死体の検死は警察から完全に独立した検死官が行います。検死官は全員法医学を専攻した医師免許を持つ医官であり、検死官事務所に所属しています。

かくして23世紀の犯罪捜査は科学的な厳密性が増しており、自白偏重捜査による冤罪はもはや過去のものですが、冤罪がゼロというわけではありません。人間のすることですから、科学捜査が誤っていたり、不適切であったりすることもあり、科学捜査も絶対でないことはもちろんです。

ただ、現在では犯罪捜査への応用に特化した「犯罪科学」「犯罪医学」という科学・医学の応用分野が独立した領域として確立されてきており、多くの専門研究者を擁して科学捜査の正確性を高める学問的な努力が日々行われているところです。
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by komunisto | 2014-06-18 11:08 | 司法