矯正所見学

2214年10月25日

23世紀未来社会の法制度的な面で一番大きく変わったのは、犯罪を犯した人の処遇に関わる制度だと思います。以前、報告したように、23世紀の地球上にはもはや刑罰制度がありません。刑罰という制度は、リンチと同様、過去の野蛮の象徴だとみなされているからです。

犯罪を犯した人に対して実際どのような処遇をするかは、国に相当する各領域圏によって若干の違いがありますが、日本の場合は、身柄を拘束しない保護観察と、拘束する矯正処遇とに分かれています。今回、報告するのは後者の矯正処遇についてです。

矯正処遇は矯正所という施設に身柄を拘束される処遇であり、重罪犯に対する処分です。かつての懲役刑に似ていますが、刑罰ではないので、個別的な人格矯正に重点が置かれます。

矯正所は旧刑務所を改装した施設が大半ですが、事前予約すれば見学が許されているので、比較的近場の矯正所を見学してみました。

まず、昔の刑務所と違うのは、塀がないこと。柵と出入り口での警備官によるチェックはありますが、外観は病院のような感じです。入所者の自由な出入りはさすがに認められませんが、外出は職員同伴なら許されるそうです。

内部も鉄格子なしの個室制で(覗き窓あり)、まるで入院病棟のようなつくりになっています。制服の刑務官はおらず、矯正官と呼ばれる私服のスタッフが入所者の矯正指導に当たります。懲役刑ではないので、工場労働もなく、矯正は心理的なカウンセリングや集団面接などが中心になります。

収容期間も、予め何年と判決されるのでなく、罪状ごとに定められた一定年数を一単位とする更新制で、最大延長10年だといいます。21世紀人なら、殺人を犯しても10年?!と唖然とするかもしれませんが、あくまでも刑罰ではないので、10年でも長過ぎるという批判があるほどです。

もっとも、非常に矯正が困難な人のために、保安上の観点から終身間拘束可能な終身監置という究極の重い処分も用意されていますが、現時点でこの処分に付せられている人は、全土で50人程度とのことです。

23世紀の世界では、犯罪原因のナンバーワンだった貨幣経済が廃されたことで、全般に犯罪が激減していますから―これも、全世界的な傾向です。―、矯正所の数や収容人員も少なくて済み、その分、一人一人に働きかける個別処遇がしやすい環境が確保されているようでした。
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by komunisto | 2014-10-25 10:10 | 法律