23世紀の観光政策

2215年3月20日

遺憾なことに、21世紀は、23世紀から振り返って「テロの世紀」と呼ばれています。何しろ、21世紀最初の年2001年は、資本主義の象徴ニューヨークの世界貿易センタービルを倒壊させたまさに空前の航空突撃テロで幕を開けたのですから。

テロの犠牲はどれも悲惨ですが、中でも観光客の巻き添え死は気の毒です。21世紀は同時に「観光の世紀」でもあり、各国が競争のように観光のビジネス化を進め、観光ブームが起きていましたから、観光客がテロに巻き込まれる危険も増していたのです。

めぼしい産業のない国やすでに斜陽化している国にとっては、観光客の落としていく金は重要な恵みでしたが、一方で観光客の落し物は金だけではありません。ゴミや汚物も落としていきます。それは環境悪化の要因となり、また重要遺跡の汚損等の原因ともなります。

世界遺産云々といって多額の費用を要する保存を義務付けながら、一方で観光による劣化については知らぬふり。こうしたポリシーに、21世紀時代の筆者はどこか偽善を感じていました。

では、23世紀の観光やいかに?以前の記事で、世界が一つになった23世紀には、国というものがなく、従って国境もないので、世界旅行は完全自由というご報告をしましたが、これには重要な留保があります。

たしかに世界共同体を構成する各領域圏は原則出入り自由なのですが、観光目的の入領には毎年何人までと上限を設けるのが決まりです。一方で、長期滞在目的での入領に特段の制限はないのです。これは、21世紀までのやり方とは正反対ですね。

このように観光のような一時滞在目的の入領を制限する理由として、遺跡や保護区の環境保全もあるのですが、もう一つの重要な理由として、これも以前の記事でご報告した貨幣経済の廃止もあります。

現在、どの領域圏でも貨幣なしにあらゆる物が手に入る一方、物の生産量には自ずと限界がありますから、海外から押し寄せる観光客の大量取得による物不足という事態を防ぎたいわけです。

かくして、23世紀の観光は旅行会社を通した商業観光ではなく、各領域圏観光局が直担管理する上限付きの「管理観光」の形をとります。従って、人気の高い領域圏では何年も先まで予約待ちという「行列」ができることも珍しくありません。
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by komunisto | 2015-03-20 10:49 | 政治