民衆公訴制度

2215年5月19日

23世紀の社会では、200年前には一般常識的に皆がよく知っていた様々な文物制度が廃れていることはこれまでにもいくつかご報告してきましたが、司法の分野では、犯罪の被疑者の公訴を主要な任務としていた検察制度が廃止されています。代わって、民衆公訴制度というものが導入されているのです。

民衆公訴制度とは、犯罪の被疑者の公訴を市民から抽選された陪審員が決定する制度をいいます。そのような陪審のことを起訴陪審とも呼びます。これは起訴された事件を法廷で審理し、判決する審理陪審に対する用語です。

警察が捜査を終えた事件は、いったん管轄の裁判所に送致され、そこで改めて起訴陪審が招集されます。陪審員の任務は民衆会議代議員免許取得者の場合は義務的ですが、それ以外の市民の場合は理由をつけずに辞退することができます。

起訴陪審は23人という大人数から成り、審理は非公開で行われますが、被疑者は弁護人の同席・助力を求める権利が保障されます。起訴陪審の起訴決定は多数決によりますが、12対11という一票差の僅差決定での起訴は認められず、13人以上の賛成という特別多数決によります。

ただし、このように起訴陪審が招集されるのは一定以上の重罪事件に限られ、軽罪の場合は予審判事という予備審理専従の裁判官が起訴を決定します。

どちらの流れにせよ、起訴が決定されると、事件は公判に付せられます。その後、法廷で旧検察官の役を担うのは、民間の弁護士から選任された民衆側代理人です。正式には公訴代理人と呼ばれるこの職務は弁護士の公的義務とされていて、事件ごとに裁判所から弁護士会を通じて割り当てられることになっています。

公訴代理人は原則として一件に付き二人選任され、コンビで当たりますが、大きな事件の場合は三人以上の公訴代理人が選任され、チームで当たることもあります。

以上のような処理がなされるのは一定以上の犯罪の場合で、微罪になりますと、起訴は所轄の警察署長が直接に行います。そして、こうした微罪裁判では公訴代理人は選任されず、裁判官と被告弁護側だけの簡易裁判で処理されます。

このように検察制度が廃され、民衆公訴制度に移行した理由として、民衆主権の原理があります。この原理は政治のみならず、司法にも及びますから、国家が検察官を通して公訴を担う古典的な国家訴追の制度は廃されたわけです。

ちなみに、周囲の人に旧検察制度のことを尋ねてみると、半分ぐらいが「聞いたことはある」との答えでしたが、そのイメージを尋ねると「古い」「後進的」といった回答が大半を占めました。どうやら23世紀人にとっての旧検察制度は、21世紀人にとっての「お奉行様」みたいなイメージを醸し出すようです。
[PR]
by komunisto | 2015-05-19 09:43 | 司法