敵/味方思考の消滅

2216年2月6日

23世紀の世界で目立つ特徴は、敵/味方思考の消滅です。つまり、23世紀人は敵/味方を区別して争うという習性を持たないのです。この点では、ヒトという動物そのものの本質が根本から変化したようにも見えます。しかし、筆者の見るところ、それは本質的な変化ではなく、政治的・政策的な変化がもたらした結果と思われます。

とりわけ、政党政治の廃絶です。政党という党派集団を作り、権力の掌握を目指して抗争するという政治慣習が消滅したのです。これは地球革命の大きな成果でした。党派集団は敵/味方思考を強めます。当然ライバル党派は敵ですが、しばしば同じ党派内部でも党の指導権や路線をめぐり敵/味方の抗争が発生します。こうした敵/味方の峻別は時として流血事態や戦争にもつながります。

もっとも、抽選制による民衆会議の制度が地球的なスタンダードとして定着している23世紀にも政党は存在するのですが、現在の政党は政策提案を主とした政治クラブ的な団体であり、直接に政治に参加することはありません。

政党員がたまたま代議員に就任することがあっても―それは認められています―、代議員は会派を形成することが禁じられ、特定の政党や政治団体の利益代弁者として活動することも固く禁じられているため、政党の影響が民衆会議に流入することはないようです。

従って、民衆会議の審議も、そちら21世紀の国会審議の光景とは大きく異なり、与党と野党が激しく応酬するような場面はありません。基本的に円卓会議の形で、政策そのものを冷静かつ論理的に討議しています。

グローバルなレベルでも事は同じで、国というものがありませんから、大国が陣営を作って互いに抗争するというようなうんざりするパワーゲームはもう見られません。23世紀初頭の世界は対外戦争も内戦も知らない地球史上前例のない平和を享受していますが、これも敵/味方思考の消滅によってもたらされた理想状態と言えます。
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by komunisto | 2016-02-06 14:28 | 政治