司法大革命(上)

2216年9月23日

今回は、23世紀における司法制度の大改正に関するご報告です。これまでにも司法制度については何度かご報告してきましたが、従来、裁判所の制度設計に関して変更はありながら、裁判所を軸とした司法制度は世界大革命を経ても基本的に維持されてきました。それが、このたび根本から変革されたのです。

そもそも裁判所という制度が廃止されました。と言われても、なかなかイメージは湧きにくいかと思いますが、裁判という“上から目線”的な紛争処理が廃されたということです。代わって、従来の民事裁判の機能は、衡平委員という機関に引き継がれます。なお、家庭裁判所に相当する機能も衡平委員が担います(一般民事事件と家庭事件という区別がありません)。

衡平委員とは漢字が見慣れませんが、要するに、民事紛争が当事者間で公正妥当に解決されるべく中立的に後押しするような第三者です。衡平委員は通常二人で、一人は任期制の法律家、もう一人は地元の有識者から事案ごとに選ばれます。

衡平委員の任務は裁判の判決のような強制的な裁定ではなく、あくまでも当事者同士の和解を助ける仲介役にすぎませんから、衡平委員の面前での結論は当事者間の公式な合意という意味しか持ちません。

一方、犯罪処理に当たる機関は少し複雑で、二段階制になります。すなわち犯行事実の認定と犯行者処遇とが峻別され、前者は真実委員会という機関が担当します。真実委員会は五人制で、構成は法律家と市民代表が一人ずつ、残りは法律家を含む有識者で、全員が事案ごとに選ばれます。

真実委員会は証拠を検討し犯行事実を解明していく点では刑事裁判と似ていますが、あくまでも真実解明だけを任務とし、犯人を裁くということはしません。従って、その結論も判決ではなく、単なる事実認定です。

真実委員会で犯行事実が認定されたら、続いて矯正保護委員会という機関へ送致され、そこで犯行者に対する処遇が決定されます。これは専門的な手続きのため、委員は全員矯正保護の専門家で構成されます。なお、被害者が希望する場合、真実委員会は修復といって被害者‐加害者間で一種の和解をセットすることもあります。

真実委員会の事実認定は一回限りのもので、裁判のように控訴は認められません。ただし、不服があれば、オンブズマンという不服審査機関に審査請求したうえ、決定取消しと再審議を求めることも可能です。なお、憲法(憲章)上の不服があるときは、中央民衆会議憲章委員会に違憲審査請求をします。

一方、矯正保護委員会は二審制を採っており、不服があれば、矯正保護委員会の許可を得て中央矯正保護委員会に対して審査請求が可能です。ただし、憲法上の不服はやはり中央民衆会議憲章委員会に対してすることになります。

何だか複雑になったような気もしますが、整理すれば、裁判所⇒衡平委員/真実委員会+矯正保護委員会という図式です。実は、長く人類社会を支配してきた裁判所という仕組みを廃して、このような非裁判的かつ非常設的な紛争・犯罪解決システムに移行することは世界的な流れでもあり、「司法大革命」と呼ばれています。

日本では当初、裁判所制度維持論も強かったそうなのですが、数年前から中央民衆会議で本格的な議論が始まり、冷静な討議の結果、上述のような基本制度が設計され、本年度、紛争及び犯罪処理に関する法律案として可決成立、約一年間の移行期間を経て、来年一月一日より施行されるとのことです。
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by komunisto | 2016-09-23 14:34 | 司法