カテゴリ:衛生( 17 )

2216年4月9日

23世紀の薬局の外来語は、英語のドラッグストアではなく、エスペラント語のアポテーコ(apoteko)です。ドラッグストアからアポテーコへの変化は、単なる名称変更にとどまらない薬局そのものの性格の大きな変化を伴っています。

旧ドラッグストアは、ご承知のとおり、薬の売店であり、商品としての薬を金銭と引き換えに購入する場所でしたが、アポテーコは薬の無償供給所です。これ自体は、今までにも随所でご紹介してきたように、貨幣経済が廃された23世紀にあっては当然のことです。

より重要なことは、アポテーコでは自由に薬を選べず、必ず薬剤師と相談し、適切な薬剤を選んでもらわなければならないことです。つまり、薬剤の入手には薬剤師の関与と対面説明が義務付けられているのです。

そういうわけで、アポテーコには薬が並んでおらず、表には相談ブースがあるのみです。薬剤師と相談して薬が決まったら、裏の薬庫から取り出された薬の説明を受けて、ようやく入手完了です。(調剤薬局では医師処方薬も扱います。)

このような手順は煩わしいようにも思えますが、考えてみれば、医師の処方薬ではない薬剤でも、自分の現症状とそれに合う薬剤を素人が自身で正確に判断するのはまず不可能なことですから、薬剤師に相談することは不適切な薬剤を選択しないうえで不可欠なことなのです。

その点、以前のたより『最小限医療社会』でもご報告したように、薬剤師の専門性と権限が強化され、薬剤師も一定の診断を下し、薬を処方することが認められているので、23世紀の薬局はプチ診療所のようになっています。風邪程度なら病院よりアポテーコへ行きます。

医師が絶対的なそちら21世紀なら薬剤師のプチ医師化には不安を持たれるかもしれませんが、元来、医師と薬剤師は一体的な職能で、後から分化したそうですから、薬剤師が部分的に元の姿に戻ったと言えるかもしれません。

ちなみに、23世紀の薬剤師となるには医科学院と同等の専門職学院である薬科学院で三年間学び、薬剤師免許試験に合格しなければなりません。さらにアポテーコの運営管理者となるためにはアポテーコで通算十年以上の実務経験を要します。
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by komunisto | 2016-04-09 10:30 | 衛生
2216年3月19日

そちら21世紀の日本では昨日、医師国家試験の合格者発表があったとのこと。21世紀初頭の段階では医師免許試験はまだ各主権国家ごと全く別個に実施されていると思いますが、23世紀現在、医師免許は世界共通です。

具体的にどのような仕組みかというと、世界共通の医師免許は、基礎医師免許と専門医免許の二段階に分かれており、医業を行なうためにはまず前提として基礎医師免許の取得が絶対要件となります。そのうえで、各専門の医療行為を指導監督なしに単独で行なうためには専門医資格が必須となりますが、今回のたよりでは基礎医師免許の件に絞ってご報告します。

医師免許は、世界保健機関の付属機関である医業監督委員会が元締め的な所管機関となっており、全世界共通の統一免許試験がここで作成されます。試験問題は23世紀の世界公用語であるエスペラントで作成され、翻訳されず、原文のまま各領域圏(国に相当)の医師連合会に委託、実施されます。

試験は5月と11月の年二回実施され、試験日は公正を期して全世界で同日に設定されます。合格すると、医師としての登録は先の世界保健機関医業監督委員会と各領域圏医師連合会の双方になされます。どちらか一方でも登録を欠くと、医業を行なうことができなくなります。

ちなみに医師連合会は、日本の旧医師会のような医師の職能的利益団体ではなく、世界保健機関と連携して活動する準公的な医療組織で、各領域圏において医師法違反事案の調査と処分の権限も持っています。

このように医師免許制度は200年で随分様変わりしたようですが、考えてみますと、医学が人類という単一の生物の病気に関する研究と治療に当たる普遍的な学術であることに鑑みれば、医師として必要な素養と技量も普遍的なものとなるはずですから、免許制度も世界共通であって不思議はないのでしょう。

23世紀の免許ないし資格には、医師のほかにも世界共通のものがいくつかありますが、次回は23世紀の高度情報技術社会を象徴する民際資格として、情報技術を専門とする情報技士という資格についてご報告しましょう。
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by komunisto | 2016-03-19 11:31 | 衛生
2215年11月21日

前々回触れた安楽死の合法化政策についてです。安楽死はもう半世紀ほど前、22世紀中の法律で実現したことなので、「23世紀特有」とは言えないのですが、現在ではごく当たり前に定着しているという点では、これも23世紀的現象でしょう。

病院に安楽死部門があると言いましたが、もちろん全病院にあるわけではなく、大きな総合病院に限られます。そして、どんな場合でも患者が望めばOKというわけではなく、事前の審査と所定の手続きを経る必要があり、これらを経ない言わば「闇安楽死」は違法行為です。

まず事前審査では、患者の病名やその症状に関して、不治の病で終末期ないし高度に進行したステージにあり、その肉体的苦痛が制御不能なほど著しいことが要求されます。ここでは単に精神的な苦痛から「死にたい」という願望にとどまる場合は除外され、あくまでも肉体的苦痛が甚大な場合に限られます。

そのため、この事前審査に入る前の段階として、まず安楽死専門医が患者と面談し、患者の安楽死の希望が鬱病等の精神疾患に由来する自殺願望でないかどうかの診断をすることが義務付けられています。

この審査をクリアした後、次はカウンセリングです。ここでは、専門のカウンセラーが安楽死の意義、その経過と結果について説明し、患者が本当に安楽死を受け入れるかどうかについて、話し合います。この場合、家族・親族は同席できません。安楽死はあくまでも患者個人の自己決定によるもので、その是非について周囲から影響を受けるべきものではないとの考えからです。

このカウンセリングの結果、患者の安楽死への自己決定が充分でなく、なお逡巡があると認められた場合は、いったん手続きは打ち切りとなります。もし患者の自己決定が確固として揺るぎないと判定されれば、安楽死のプロセスに入ります。

安楽死も他の医療行為と同様、まずインフォームド・コンセントが義務付けられます。ここでは、医学的な見地から、安楽死の経過と結果が改めて説明され、患者は最終的な同意書への署名が求められます。ここで、署名せず、安楽死を取りやめることもなお可能です。

最後のインフォームド・コンセントもクリアして、いよいよ安楽死のプロセスに入ります。ちなみに、安楽死の撤回は施術の直前まで認められており、施術直前にも最終的な意思確認が義務付けられます。

安楽死プロセスの詳細は筆者が専門外の医学の話になるので、省きますが、はじめに麻酔で眠らせ、「いざ」という時の不安やパニックを防止するような措置が採られるようです。

こうした一連の安楽死対応をする部署は通常、「タナトロジー・センター」と呼ばれています。タナトロジーとは「死生学」を意味する英語由来の外来語で、ここでは医学的な「臨床死生学」を意味しています。

同センターは、安楽死のほか、患者が意識不明状態にある場合の「尊厳死」の是非を判断する役目も負っており、安楽死の施術をする麻酔科医に加え、タナトロジー専門の精神科医、内科医が常駐し、さらに看護師、カウンセラーといった支援スタッフも常勤するかなり大きな部署です。

安楽死自体は23世紀現在、ほぼ全世界中で認められているそうですが、日本の安楽死法はその中でも相当に厳格な部類に属するといいます。ここには、かつては安楽死に否定的だった日本社会における死生観がなお一定投影されているのでしょう。
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by komunisto | 2015-11-21 09:16 | 衛生
2215年9月16日

23世紀の世界では、麻薬が合法化されている。こう書くと正確を欠くのですが、少なくとも一律に麻薬を違法とする政策は採られていません。麻薬を一律違法化すると、闇組織が横行するという過去の苦い経験に学んでいるからです。

といっても、麻薬使用が全面的に合法化されているわけではなく、世界保健機関のガイドラインに従い、嗜好としてでなく、治療目的の製造・使用のみが許されているというのが正確です。従って、麻薬の処方・調剤は麻薬専門医・薬剤師の専権とされ、それ以外の個人による処方・調剤や自己使用も違法です。

治療目的の麻薬使用が認められるのは、現在、薬物依存症は無理に完治させず、依存の軽減と薬理作用の強い麻薬(強効麻薬)から弱い麻薬(弱効麻薬)への転換を目指すという軽減・転換療法が主流化していることによるようです。そのため、治療の導入段階では覚せい剤やコカインですら、少量の処方がなされる場合もあるとのこと!

こうした治療目的の麻薬の原料は、世界保健機関の下部組織である麻薬管理委員会が認定した特別農場でのみ栽培が許されており、不法に流出しないよう厳重に管理されています。また麻薬の製造・供給も世界保健機関の計画に従い、世界規模で調整されています。

このような合法的麻薬管理政策のおかげで、23世紀の世界では麻薬カルテルのような犯罪組織は一掃されているのです。ただ、麻薬を不法に栽培・所持したり、譲渡したりした者がたまに検挙されることはありますが、単発的な出来事にすぎないようです。

とはいえ、以前のたよりでも報告したように、23世紀の世界では酒・タバコが厳格に規制され、特にたばこは全面禁止されていることと対比して、麻薬合法化には釈然としない感もありますが、23世紀人に言わせれば、社会的なコストにかけては酒・タバコの害のほうがはるかに大きいとの考えに基づくのだとか。

これも時代の意識の変化ですが、たしかに、21世紀を思い出すとアルコール・ニコチン依存症者のほうが麻薬依存症者よりはるかに多く、特にタバコは非喫煙者にまで及ぶ間接喫煙の害も考慮すれば、先のコスト計算もいちおう納得です。
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by komunisto | 2015-09-16 07:18 | 衛生
2215年8月11日

個人の遺伝情報を利用したオーダーメイド医療とか個別化医療といった新しい医療は21世紀に登場していましたが、23世紀の医療ではこうした医療のあり方は普通のことで、遺伝子検査が定番となっています。

かつて定番検査といえば、レントゲンなどの画像検査であり、こうした画像検査では現在、いっそう精緻化されたアイソトープ検査が主流です。しかし、臓器等の現状態を視覚的に認識するだけでなく、どのような病気の遺伝因子があるかを検査して、予防や治療にも役立てるのが遺伝子検査です。

こうした遺伝子検査は革命前の資本主義時代には営利的な医療ビジネスに委ねられており、倫理的な面でも疑義がありましたが、現在では健康診断のメニューにも普通に入っており、また病院での検査でも画像検査と同時に行なわれることもあります。

医療情報の中でも遺伝情報は特に厳重管理を要する個人情報であるため、そうした情報面での不安がつきまといますが、営利ビジネスが存在しない共産主義社会では遺伝情報が営利的に悪用される危険はありません。

そのせいか、大胆にも個人の遺伝子検査結果はすべて中央医療情報センターにデータベース化され、医療機関が情報共有できるようにシステム設計されているのです。従って、遺伝子検査はどこかで原則として一度だけ受ければよいわけです。

こうした個人情報管理は中央情報保護庁によって常時技術的に監査されるとともに、中立的な個人情報オンブズマンによって法的な権利保護がなされるという技術面‐法律面の二重の防護体制によって守られています。

ちなみに貨幣経済が廃された23世紀には生命保険のような商業保険も存在しないため、生命保険加入に当たり遺伝病因子を理由に拒否される心配をする必要もないのです。貨幣経済廃止はこんなところでも効果を発揮しています。

ただし、遺伝病因子が社会的な差別の対象となる危険は残るわけですが、これに関しては包括的な差別禁止法において病気を理由としたあらゆる差別の禁止が規定され、法的な救済手段が用意されています。
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by komunisto | 2015-08-11 10:40 | 衛生
2215年5月25日

23世紀に消えたものシリーズ、今回は精神病院です。精神病院と言えば、そちら21世紀の日本は依然として入院患者30万人を数える世界に冠たる精神病院大国ですね。ところが、200年後の現在、精神病院入院患者は長期に限れば0人です。

そもそも精神病院という制度自体が廃止されて久しく、最後の精神病院が閉鎖されたのが約80年前ですから、これは一つ前の22世紀中の医療改革の成果でした。精神病院廃止は、「近代的」な精神病院制度ができる以前の「座敷牢」廃止に次ぐ第二の精神医療革命とも呼ばれています。

海外では、もっと早くに精神病院を廃止していたところも多いので、日本はこれでも遅かったくらいですが、その要因は精神障碍に対する差別意識でした。22世紀初頭の革命は、こうした日本に根強い差別意識の根絶を結果する大きな画期点でもありました。

ところで、精神病院がないということは、精神医療が提供されないことを意味しません。現在、精神科という診療科は存在せず、通常は総合神経科という名称の下に、旧精神科と神経内科とが統合されています。

精神医学と神経医学は今日でも別個の学術として個別に研究されているのですが、現在、脳の画像診断技術が進み、精神疾患でも画像診断ができるようになってきたことに加え、神経病でも精神症状が出ることは少なくないことから、臨床の現場では精神医学と神経医学が統合され、総合神経科という新しい診療科が生まれているわけです。

ただし、現在でも精神科の入院治療がないわけではありませんが、それは急性症状が発現している場合で、入院期間もせいぜい10日程度の集中治療です。また、かつて人権侵害的制度として悪名高かった強制的な措置入院制度も廃止されています。

ちなみに、アルコール・薬物依存症に対しても入院治療は不要なのかということですが、23世紀にはこうした依存症自体が激減しており、極めて例外的な治療施設として依存症専門病院が見られる程度です。しかしこれも精神病院ではなく、心療内科病院です。

21世紀には薬物依存を中心に世界的に深刻な社会問題ともなっていた各種依存症の激減は、23世紀における世界共通現象としていろいろな角度から研究もなされているようですので、機会を見てこの問題についてもご報告してみたいと思います。
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by komunisto | 2015-05-25 07:28 | 衛生
2214年10月20日

23世紀の世界へやってきてしばらくして気がついたのは、眼鏡をかけた人を見かけないことです。目の悪い人はいなくなったのか。もちろん、そうではありません。眼鏡という器具が必要なくなったのです。

もっとも、子どもの近視に関してはよほど進行しない限り、矯正眼鏡の使用が推奨されるので、子供用の矯正眼鏡は残されています。またファッションや紫外線防護のためのサングラスも使用されるので、正確には、大人用の矯正眼鏡は必要なくなったということになるでしょう。

理由は、視力矯正手術が標準治療として定着したからです。21世紀中にもいわゆるレーシック手術法が普及し始めていましたが、23世紀の視力矯正手術は目の中にレンズを移植するというインプラント手術法です。

このようなインプラント術も技術としてはすでに21世紀から開発されていましたが、レーシックと比べて、短時間で安全に施術でき、予後も良好ということで、レーシックに取って代わったのです。こうしたインプラント術は、近視に限らず、遠視や老眼にも適用できるようになっているため、老眼鏡も必要なくなっています。

また、病気や負傷により後天的に失明した人や一部の先天性視覚障碍者向けのインプラント術の研究開発も進んでおり、視力矯正をめぐる技術の進歩には目覚しいものがあります。

それでも不慣れな医師による不手際で失明したりしないかという不安は残りますが、現在では視力矯正を専門とする矯正眼科という診療科が一般眼科とは独立して開設されるようになっており、矯正眼科専門医の資格がなければ施術できないという縛りがあるため、不幸な医療ミスがない限り、専門医による安全な施術が受けられます。

問題は費用?という心配は無用です。もう当ブログではいろいろな記事でご紹介してきたように、23世紀の社会は眼鏡のみならず、貨幣からも解放されていますから、どんな高度な治療も無料で受けられます。
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by komunisto | 2014-10-20 08:36 | 衛生
2214年8月27日

21世紀の世界では新型インフルエンザ、コロナウィルス、エボラ出血熱等々毎年のように新しい国際感染症対策に追われていますが、200年後の23世紀の世界ではどうなっているのでしょうか。

残念なことに、感染症を撲滅することはできていません。新薬が開発されても、ウィルスのほうが進化を遂げ、薬剤耐性を持つため、なかなか追いつかないのです。しかし、感染拡大の封じ込め策では長足の進歩が見られます。

何よりも貨幣経済が廃止されたことで、21世紀までは「途上国」とされてきた地域でも、財政にとらわれることなく公衆衛生・医療体制を整備することが可能となり、もはや地球上に医療後進地域は存在しないと言われています。

特に従来からマラリアをはじめ、熱帯病の多発地域だったアフリカには、アフリカ全域を束ねる環アフリカ圏立の熱帯病対策センターが設置され、その附属病院・保健所がアフリカ各地にあり、予防と治療に当たっています。

また世界保健機関もかつてのような単なる国際保健行政機関ではなく、感染症専門医療チームを擁する医療機関でもあるため、一定規模の感染拡大が見られた地域には、直ちに医療チームが派遣され、実態調査を兼ねて初期治療に当たります。この医療チームはかつての国際医療NGO「国境なき医師団」を前身とするものだそうです。

こうした迅速な対処が可能になったのも、国家という枠組みが取り払われたからです。国家が廃止され、人の往来が自由になった23世紀は感染症の拡大リスクも高いのですが、一方で、国家主権にとらわれない迅速かつ広域的な初期治療対応も可能となり、感染拡大を早期に封じ込められるのです。

ちなみに、薬剤開発も今日ではグローバルに行われ、無償で供給される体制が整備されていますから、貧困ゆえに必要な薬剤が入手できないというような事態は過去の貨幣経済時代の悲劇にすぎません。
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by komunisto | 2014-08-27 08:41 | 衛生
2214年8月7日

23世紀に飛んできて初めて歯科に行くことになったのですが、医師は口の中を一目診るなり、「予防歯科にあまり行ってませんね。」と一言。21世紀までの歯科では言われたことのない苦言だったので、どういうことなのか調べてみて合点がいきました。

23世紀の歯科診療が公立診療所を中心としていることは以前ご報告しましたが、見落としていたことがありました。それは、23世紀の歯科は予防歯科と治療歯科の二段階制になっているということです。このうち、予防歯科とはその名のとおり、予防を目的とする歯科ですが、何を予防するかというと、主としていわゆる歯周病です。

虫歯と違い、歯周病は知らないうちに進行していき、悪化したときには歯を失う結果となり、歯を失うことは認知症をも促進するということから、歯周病予防が21世紀から呼びかけられていましたが、予防歯科と治療歯科が分離していなかった当時は、スローガンにとどまりがちでした。

現在、予防歯科専門の「歯科予防院」と呼ばれるクリニックが街中にも見られます。開業型の歯科医院がほとんど消滅した一方で、こうした予防院が設立されているわけです。予防歯科は歯科医師ではなく、歯科予防師と呼ばれる専門職が担当し、予防院もこうした歯科予防師が開業しているのです。

21世紀には聞いたことのなかった歯科予防師とは、歯科衛生士として一定以上の経験年数を持つ人がさらに研修と試験を受けて資格認定される上位専門職です。歯科医師ではないので、歯の治療行為はできませんが、歯科検診や口内清掃、ホワイトニングなどの予防的・審美的処置を単独でする権限を持っています。

多くの人が年に二回くらいはこうした歯科予防院に行って検診や予防的処置をしてもらうようです。もしすでに虫歯や歯周病が進んでいれば、歯科予防院から歯科診療所に紹介されます。

こうした予防歯科の利用が普及した結果、以前の日本では高齢で歯を失う割合が際立って高かったことが大幅に改善され、高齢でも歯が保たれ、結果、認知症の予防にも役立ち、健康長寿が実現されているとのことです。これも以前ご報告したことですが、23世紀は一般医療でも予防機関である保健所に外来部門が設置され、病院は最後的に利用される「最小限医療社会」が実現されていることとパラレルな現象のようです。

考えてみれば、治療とは悪いところを治すことで、それは裏を返せば悪くなるまで放置しておくということですから、体にせよ歯にせよ、悪くなってから治療すればいいという治療中心・病院依存の発想は一見合理的なようで、決して合理的ではなかったのでした。 
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by komunisto | 2014-08-07 09:11 | 衛生
2214年6月23日

以前、23世紀には開業医はほとんどいないとご報告したところ、では歯科診療はいったいどう担われているのかというご質問を21世紀の読者から受けましたので、回答を兼ねてご報告します。

歯科というと、かつてはほぼすべてが開業医だったため、貨幣経済の廃止に伴い開業医の旨味がなくなり、開業医がほぼ消滅すると、歯科診療は供給されなくなるのではないかとの懸念があるのでしょう。しかし、現在、歯科は主に公立の診療所によって担われています。

21世紀人にはなかなかイメージが湧かないのですが、公立歯科診療所とは市町村が直営する歯科診療所のことで、そこには複数の歯科医が所属し、大きな診療所では20人以上いることもあります。

昔の開業歯科とは異なり、一般歯科・小児歯科・老年歯科・矯正歯科・口腔科などの専門科に分かれており、専門分業化が進んでいます。完全予約制で随時急患受付という診療方式は昔とそう変わっていません。

このような公立歯科診療所は市町村に必ず複数箇所開設されていますが、昔の歯科医院のようにコンビニの数より多いとまで言われたほど多くはないので、通院が難しい高齢者や障碍者向けに訪問診療部が設置され、自宅で歯科診療が受けられるようになっています。

ちなみに、現在完全無償化が達成されていることもあり、インプラント術が高度に発達・普及しており、公立診療所でも普通に受けることができるとのことです。

その他技術的な面でいろいろ進歩があるようですが、23世紀世界に移り住んでから一度も歯科診療を受けていないため、詳しいことはわかりません。本当は受けなくてはならないのですが・・・。
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by komunisto | 2014-06-23 09:49 | 衛生