カテゴリ:政治( 24 )

2213年8月24日

未来社会へ飛んで来た当初、街で見かけたパトカーの表示が見慣れた「S県警」ではなく、「N道警」に変わっていることに気がつきました。「道」という自治体なら、昔は北海道しかなかったはずですが、S県は廃止されたのだろうか・・・。

調べてみると、警察が所属する広域自治体の制度と名称が大きく変更されていたのでした。つまり、21世紀初頭の47都道府県制は廃止され、今は12道制になっているのです。

「道」とは「地方圏」と呼ばれる広域自治体の名称で、現在は北海道・東北道・北関東道・中関東道・南関東道・北陸信越道・東海道・関西道・中国道・四国道・西海道・琉球自治道の12道に分かれています。

ちなみに東京は旧23区部(現在は12区)と旧市町村部が分離され、旧市町村部は南関東道に編入されています。旧区部は東京都市と呼ばれています。都市は市でありながら地方圏=道と同格な枢要都市を指しますが、大阪や名古屋など複数あり、東京都市はその一つにすぎない位置づけです。

国家という政治単位が廃止されたことで、中央集権制はすでに克服されており、いゆわる首都という中央集権を象徴する中心都市も存在しないのです。

ただ、国会に相当する中央民衆会議は真ん中の名古屋都市に所在するので、強いて言えば名古屋が現在の「首都」ですが、そうは呼ばれず、「政治都市」と通称されています。一方、現在の東京都市は政治経済都市から各種学術研究機関やシンクタンクが集まる学術都市へと変貌しています。

実は21世紀前半の地方制度改革で、日本はいわゆる「道州制」に移行していたのですが、これは国の一部権限を言わば払い下げしてもらう形で立ち現れた地方集権体であって、それは市町村自治を脅かす存在でもありました。

23世紀現在の道は主に警察・司法を中心とした秩序行政を担う自治体で、警察・裁判所のほか、常設の災害救難隊も保有しています。道にも固有の代議機関として民衆会議が置かれていますが、道の権限は限定されており、地方自治の中心は市町村にあります。この点でかつての「道州制」とは本質的に異なるものと言ってよいでしょう。

例外として、旧沖縄県に相当する琉球自治道は独自の道憲法を持ち、法体系も本土とは別立てで、他の一般道より高度の自治が認められる特別の地位を与えられています。沖縄は古くは日本とは別の王国であった歴史に鑑み、こうした地位が保障されているわけです。
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by komunisto | 2013-08-24 09:56 | 政治
2213年8月15日

日本では、今日は「終戦の日」のはずです。「はず」というのは、23世紀の現在、もはやこの日が「終戦の日」として意識されることはほとんどないからです。歴史健忘症?と思われるかもしれません。

しかし、終戦の1945年からすでに268年。これだけの年月が経つと、大きな出来事もさすがに歴史書の中の存在と化します。今や第二次世界大戦は「近世史」の出来事として扱われています。

実際、23世紀人にとっては「世界大戦」ということ自体、想像を超えています。今、世界には軍隊がありません。もう少し正確に言うと、国家ごとの国民武力としての国軍組織が存在しません。現在、かつての国家に当たるのは領域圏と呼ばれる政治単位ですが、すべての領域圏は軍隊の保有を禁止されているのです。

これはおよそ100年前の世界連続革命後に設立された世界共同体の憲章において、世界の法として定められていることです。カントが理想とした常備軍廃止による恒久平和がようやく実現されたのです。ただし、二つの留保が必要です。

一つは全領域圏で構成する世界共同体が保持する警察軍の存在です。この警察軍とは名称のとおり治安警備が任務ですが、通常の警察よりも重武装であることが特徴です。これは今でも局地的には発生し得る武力紛争の解決のために常備されている武装組織ですが、紛争自体が少ないため、要員数は10万人ほどで、出動はまれです。

もう一つはやはり世界共同体が保持する航空宇宙警戒軍の存在です。これは警察軍よりは通常の軍―特に空軍―に近い武装組織です。要員数も80万人と多く、世界各領域圏から要員が選抜されています。この組織の任務は宇宙空間からの落下物の破砕や、他の惑星からの攻撃への備えです。後者については説明を要するでしょう。

現在でも、他の惑星に知的生物が生存することの確証は得られていませんが、宇宙観測の進歩により、他の惑星に知的生物が生存する可能性について、世界の科学者たちの見解はかなりポジティブになっています。そのため、万が一他の惑星から地球が攻撃を受けた場合に備えて、こうした一種の防空部隊を常備しているのです。

このように恒久平和の理想は実現されているのですが、同時に現実的な事態に想定した備えも怠らないわけです。これもまた、未来世界では理想と現実が統一されていることの端的な現れだと言えるでしょう。
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by komunisto | 2013-08-15 11:54 | 政治
2213年7月13日

旅行好きの人にとって、200年後の未来世界は天国でしょう。というのも、未来世界には「国境」という観念がないため、世界旅行は原則的にフリーパスだからです。つまり、ビザなしで世界中どこでも旅行でき、入国審査に当たる面倒な手続もないのです。

このようなことが可能なのは、未来世界にはそもそも「国家」という政治的な枠組みが存在しないからです。といって、世界が完全に一つになったわけではないのですが、旧世界で「国家」と呼ばれていた政治単位は、今「領域圏」と呼ばれるより緩やかな単位に変化しています。例えば、日本は「日本国」ではなく、「日本領域圏」です。

こうした領域圏が統合されて「世界共同体」という一つの包括的な政治単位が構築されています。これは旧世界の「国際連合」(国連)の後身と考えても間違いありませんが、国連はその名のとおり、あくまでも独立国家の連合にすぎなかったのに対し、「世界共同体」は単一の政治単位です。

現在、世界共同体は70個ほどの領域圏で構成され、各領域圏は世界共同体の総会でそれぞれ平等に一票を持ちます。各領域圏には一定の内政自治権が留保されていますが、それも世界共同体の政策と条約の範囲内でのことであり、もはや排他的な主権は有していません。

このように今や、世界はほぼ一つになったのです。そのために世界旅行の自由も大幅に増したわけです。とはいえ、人が何の制約もなく移動できた先史時代とは違います。

空・海港での出入審査は大幅に簡略化されてはいますが、逃亡犯罪人検挙のための指紋照合や違法物資の所持チェックは受けなければなりません。また貨幣貿易が全世界で廃され、貿易に不可欠の税関審査がない反面、環境保護のための検疫はより厳格化されています。

こうした社会秩序の維持や環境保全を目的とする必要最小限度のチェック体制を考慮しても、世界旅行の自由が格段に拡大されたことは事実です。世界旅行の自由にとって高い壁となっていたのは、「国家」であったことが改めて実感されます。
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by komunisto | 2013-07-13 10:45 | 政治
2213年7月4日

2013年7月4日の日本では、参議院選挙が告示されました。改憲派が参議院も席巻するかどうかが焦点のこの選挙は、戦後日本の時代を画する重要な選挙になったと、未来社会の歴史書には記述されています。

ところで、23世紀未来社会の政治についてはまだご報告していませんでした。実は未来社会に選挙はありません。すると、独裁体制なのか。そうではありません。未来社会の政治の中心は「民衆会議」と呼ばれる一種の議会です。

この「民衆会議」は中央と地方に相似的な形で置かれており、中央のものは「中央民衆会議」といい、旧社会の国会に相当します。地方議会に相当するのは、地方自治体の「民衆会議」です。

ただ、「民衆会議」が旧社会の国会・地方議会と決定的に異なるのは、「民衆会議」のメンバーたる代議員は選挙でなく、くじ引きで選ばれることです。くじ引きといっても、全くのランダムではなく、代議員免許を持つ人の中から抽選されるのです。

代議員免許とは代議員免許試験に合格した人に与えられる代議員資格のことで、その試験は代議員として必要な素養を幅広く問う統一試験ですが、難易度は各種の専門資格試験に比べると容易で、誰でもその気になって勉強すれば、三回以内の受験で合格すると言われています。

抽選制のため、選挙制のようにカネとコネを握る大政党のボスが何十年も連続して当選し続けることはなく、政治が世襲されることもあり得ないばかりか、そもそも政治は職業ですらなく、免許制に基づく市民の任務となっているのです。

未来社会にも政党は存在するのですが、政党単位で「民衆会議」に参加することはできない仕組みのため、未来社会の政党とは政治クラブのようなものにすぎません。

それにしても選挙なしで不満はないのか、知人に聞いてみたところ、「選挙なんて学校の生徒会ならいいが、大人のすることではない」と笑っていました。未来社会の人たちにとって、選挙は子どもじみていると映るようです。

逆に、旧社会の人たちにとってはなかなか素直に納得しにくいことですが、未来社会では選挙なしの民主主義がしっかりと成り立っているのです。

ちなみに23世紀未来社会には大統領も首相も、またかれらの手足となる官僚も存在しないのですが、このように政府機構を持たない未来社会の興味深い行政についてはまたの機会にご報告することにしましょう。
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by komunisto | 2013-07-04 10:23 | 政治