カテゴリ:人生( 6 )

2215年12月3日

占いにご興味はお持ちでしょうか。もしそうだとしたら、23世紀はいささか味気ないかもしれません。というのも、23世紀現在、占いは完全に廃れ、過去の大衆文化として歴史学的な考察対象と化しているからです。

思えば、「科学の時代」と言われた21世紀になっても、科学の対極にある占いが人気だったのは、人々の生活不安の投影だったのでした。革命前の貨幣経済社会は、将来への不安が支配していましたから、多くの人が科学では予測できない自分の運命を知りたがったのです。

これに対し、貨幣経済から解放された23世紀の世界は、もはや生活不安とは無縁です。少なくとも、カネにまつわる山あり谷ありの人生というものは想定されません。とは言っても、自分の人生を予測したいという欲求が23世紀人に全くないわけではないようです。

現在、占いのあった場所を埋めているものがあるとすれば、それは「人生予測ソフト」です。これは、各自の年齢、性格や趣味・特技、経歴や現在の生活状況、家族構成や家族・親族の地位といった詳細な要素情報を入力することで、今後の人生を予測するソフトです。

21世紀にも「ライフプランソフト」なるものがすでに開発されていたらしいのですが、これは家計予測を中心としたまさに貨幣経済社会の経済計算ソフトの一種です。「人生予測ソフト」は経済計算ではなく、社会学的な変数を使用した人生そのもののシュミレーションソフトなのです。

このソフトは誰でも無償で入手してすぐに実行できるのですが、万一望ましくない結果が出たらショックですね。その場合、自分の意思で変更可能な要素情報を置き換えて再度実行すると、今度は望ましい結果が出ることもあります。それによって、どこを軌道修正すれば、良い人生行路が描けるかを把握することができるわけです。

早速私もソフトを入手して実行してみたところ、生涯無名の草ブロガーで終わるという結果が出ました。ショックかと言うと逆に安心しました。有名人には有名ゆえの様々な労苦が付いて回ることを知っていますので。
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by komunisto | 2015-12-03 10:39 | 人生
2215年2月18日

今回は、前々回の記事で予告していた自治体が運営する登録パートナーシップのパートナー・マッチングサービス―言わば、公営結婚相談所―についてのご報告です。

今、21世紀人にもわかりやすくするため、「結婚相談所」になぞらえましたが、たびたびご報告しているように、23世紀には結婚という制度は登録パートナーシップ制度に置き換わっているので、厳密な言い方ではありません。

21世紀まで、この種のサービスは「結婚相談所」の名で民間の営利事業としてよく行われていましたが、貨幣経済の廃止に伴い、そうした営利的結婚相談事業も消滅し、今や公的サービスに移っているのです。

しかも、このサービスは自治体のお節介ではなく、法律で市町村ごとに設置が義務づけられたれっきとした公的サービスです。筆者のような旧世界人的感覚では、自治体がそこまでする必要があるのか疑問も多少ありますが、23世紀の自治体の役割は生活全般のサービスととらえられているので、こうした縁結びのサポートも仕事の内とみなされているようです。

さて、このサービスの仕組みですが、マッチングを希望する人は原則として自身が居住する市町村に所要データを登録します。データの登録は地方圏(例えば近畿とか東北など)の広域的レベルで共通化されていますので、その広域圏内の登録者とマッチングされます。

登録パートナーシップは異性間・同性間どちらの組み合わせも認められるため、同性パートナーのマッチングサービスもあり、登録者は自由に選択することができます。

マッチングに際しては、心理学的な知見も踏まえたコンピュータ解析で精密に相性が分析されるため、自分で相手を探すより、効率的な面もあるようです。

マッチする相手がヒットすると、登録者に通知され、双方の合意が得られれば、指定された場所でコーディネーターが最初の対面をセットし、以後も継続して会う場合は当事者同士で決めます。ちなみに、この制度を悪用して性犯罪その他の不正行為を犯した者は、登録抹消と同時に不正行為者のブラックリストに搭載されてしまいます。

またこうした制度にはつきものの不安材料となる個人情報漏洩に関しては、各自治体ごとに個人情報保護監という独立した監察機関が置かれ、情報管理に目を光らせていますから、21世紀よりも安心なぐらいです。

ちなみに、地元地方圏のデータによると、登録パートナーシップのおよそ42%がこのサービスを介して成立したとのことで、半分弱が利用している計算になります。
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by komunisto | 2015-02-18 11:22 | 人生
2214年8月17日

当『未来社会だより』も発信開始から1年以上が経ちましたが、ある読者より自分も21世紀の世界を脱して23世紀の世界にタイムトラベルしてみたいが、どうすればよいか教えて欲しいとのご依頼を受けました。いつか受けるご依頼だろうとは思っていました。実はタイムトラベルするには、いくつか条件があります。

一つは、21世紀の現存社会に何らのしがらみも持っていないことです。具体的に言えば、21世紀の現存社会で立派な定職に就き、家族を持ち、特別な不満は何もないという人はタイムトラベルできません。

二つ目は、100年単位で未来を構想する視点を持っていることです。逆に言えば、現在もしくはせいぜい数か月、数年先の近未来しか構想しないという人はタイムトラベルできません。

三つ目は、あらゆる常識に対して距離を置けることです。これはことさらに非常識に振舞うということではなく、例えば貨幣とか国家とかいった21世紀の世界では当たり前のものを改めて再考の必要もない当然の常識とは考えないことです。そうした常識にとらわれていると、実際、貨幣も国家もない「超常識的」な23世紀の世界にタイムトラベルすることはできません。

四つ目は、21世紀の世界を根本的に否定することです。21世紀の世界とは、すべての理想が放棄された貨幣・国家絶対の世界と言えますが、このような世界を少しでも認容する気持ちが残っていると、タイムトラベルはできません。

五つ目は、神にすがらないことです。神にすがらないとは、信仰を持たないという意味ではありません。信仰の有無にかかわらず、困った時の神頼みはしないということです。困った時に神にすがるなら、未来世界に飛ぶ必要もないので、タイムマシンに搭乗できないのです。

最後に、21世紀の世界に二度と戻らない決意ができることです。つまり、ちょっと短時間23世紀に旅行するということは許されないのです。これは初めに戻って、しがらみがないこととも深く関わります。しがらみのある人ほど、二度と戻らないという決意は鈍ります。すなわち21世紀の現存世界でのこれまでの人生ときっぱり決別できる人だけ、タイムトラベルすることができるのです。

以上の六つの条件を心理検査や面接を通じて完全に満たすと判断された人のみ、タイムトラベルの切符を手にすることができます。切符の入手方法やタイムマシンへの搭乗場所等の詳細は機密事項となっており、条件審査に合格した人だけに個別的に伝達されることとなっていますので、ここで公開することはできません。
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by komunisto | 2014-08-17 09:50 | 人生
2214年1月2日

新年早々にやや唐突ですが、皆さんはこれまでの人生を振り返り、自分らしく生きてこられたと納得しているでしょうか。つまり、天才バカボンのパパの決め科白のように「これでいいのだ」と思えますか。

個人的には、全くそうは思えませんでした。20世紀半ば過ぎから21世紀初頭まで生きてきて、自分らしく生きてはこられなかったし、これからも無理だろうという思いが強くありました。それが二度と帰還できない23世紀未来社会へのタイムマシンに乗った動機でもあります。

私が生きていた高度資本主義社会では、人生がライフステージによって制約されており、ステージごとにバリアをクリアできて初めてどうにか納得のいく人生のコースに乗れたのです。逆にそうしたバリアをクリアできないと、そこでコースを逸れていきます。やり直しの余地は極めて狭く、一度逸れるとよほどの才覚や幸運に恵まれない限り、脱落していくことになります。

21世紀の人生とはそんな障害物競走に等しいものだったため、中には追い込まれ、絶望し自殺に向かう人も跡を絶ちませんでした。

23世紀社会は、昨年の記事でもしばしば触れたように、やり直しのきくフレクシブルな社会ですから、そこでの人生は障害物競走ではなく、ゆったりしたウォーキングのようなものです。そのためか、自殺者数は大幅に減り、保健機関の統計によると年間7000人ほどです。日本の人口自体が8000万人余りに減少していることを考慮しても、年間3万人前後の自殺者を出していた200年前からは激減と言えましょう。

こうした自殺の減少は世界的な傾向だそうです。共通した背景として、貨幣経済の廃止に伴い、失業や借財による生活苦という自殺の引き金を引きやすい経済的動機が消滅したことが挙げられています。

全般に、23世紀社会は自分らしく自由に人生設計できるようになっています。例えば、日本のように元来は保守的な風土の地でも同性愛者のパートナーシップが合法化されるようになり、自分の性的指向に沿ったライフスタイルを選択できるのは一つの象徴です。

21世紀人は「これではだめだ」という自己否定的な人生観に支配されがちでしたが、23世紀人はおおむね自己肯定的で、まさに「これでいいのだ」と納得している人が多いように見受けられます。
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by komunisto | 2014-01-02 13:28 | 人生
2213年8月6日

23世紀の日本人の平均寿命は100歳台とご報告しました。人生75年を理想としていた私にとって、25年も余分に生きる可能性のある未来世界にはいささか当惑を覚えます。あと60年近くをどう生くべきか━。

貨幣経済の廃止によって、生活の不安からは解放されている未来人の人生には、山も谷もありません。旧世界での山あり谷ありの人生はほとんどの場合、貨幣収入の増減によって起きていました。それは大変ではあった反面、それなりにスリルのある人生でもあったでしょう。

山も谷もない平板な人生100年はかえって苦痛のようでもあります。ただ人生が長い分、モラトリアム期間も長く、30歳ぐらいまでは人生の模索期です。それから就職するとしても、生涯教育の充実により途中で進路変更することはいつでも可能なので、最初の職選びに神経を使う必要もありません。

ちなみに結婚については大きな制度的変革があり、現在、結婚は公証(登録)パートナーシップ制という新しい制度に置き換わっています。

これは簡単に言えば、昔の「内縁関係」がそのまま公式制度に進化したものです。要するに、一緒に暮らしたい二人―同性同士も可―は市町村に公正証書を提出し、パートナーとして登録されればそれで完了です。

こういう制度なら結婚ほど一大事にはならないので、パートナーシップが人生の節目という意識も未来人にはほとんどないようで、それは個人のライフスタイルの問題でしかないとみなされています。従って、「適齢期」などという言葉も死語と化しています。

一方、定年制度もないため、働きたい人は理論上は100歳でも働けますし、反対に40歳でリタイアしてもよいのです。ただ、実際上は70歳ぐらいでリタイアするのが慣習のようです。

70歳でリタイアしたとしても、平均してまだ30年余りも生きる必要がありますから、この長い老後をどう過ごすかが問題です。その点、前回も述べたように、未来人は「健康長寿」のため、ボランティアや趣味の活動に打ち込む老人が多く見られます。

ちなみにブロガーという「職」は完全自由業ですから、頭と手が働く限り生涯続けることになるでしょう。ただ、それだけでは物足りないので、もう少し積極的に社会に関わってみようと、代議員免許の取得に向けて勉強でもしようかと思案しているところです。
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by komunisto | 2013-08-06 13:33 | 人生
2213年6月28日

生活のための労働を強いられない未来社会の人生設計は非常に自由度が高くなっています。旧社会におけるように、10代末から20代前半で学業を終えたら就職し、40年働いて60代で定年といったライフステージによる制約がないのです。

未来社会では標準18歳で学校を終えて10年モラトリアム、30歳くらいで就職、さらに40歳で各種専門職に転職するなど珍しい人生コースではありません。

極端には60歳にして初めて就職することだって―さすがに容易ではないでしょうが―理論上は可能です。定年という制度がないので、何歳でも働けるのです。

この点、未来社会の労働は賃金労働ではなく、すべてがボランティア労働ですから、定年制がなく高齢労働者が増えると、結果として若年者の就労チャンスが制約されるという心配もありません。労働者の世代間対立は解消されています。

こうしたことを可能にする法的基盤として、未来社会では雇用上の年齢差別が一切ないことも重要です。労働法では官民問わず、年齢差別は罰則付きで固く禁止されています。賃金労働が廃止された未来社会において、年齢差別は労働基準監督署の主要な取締り事案となります。

そのうえに、雇用に際しての履歴調査さえも禁止されているのです。履歴を調査すると、不利な履歴による就労差別が生じやすいからです。従って、履歴書という慣行も消滅しています。労働者の採用は過去の履歴によらず、応募者は現時点でどんな人物であり、今後何ができるのかという観点でなされるのです。

こうした個人の自由な人生設計を知的な面で支えているのが、極めて合理的に設計・組織された柔軟性の高い教育制度なのですが、これについては次回、ご報告します。
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by komunisto | 2013-06-28 10:36 | 人生