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2214年6月28日

23世紀の日本は相変わらず鉄道網が発達していますが、200年前と決定的に違うのは、鉄道網がすべて一本化されていることです。どういうことかと言うと、公営の地下鉄や路面電車を除く鉄道網はすべて「日本鉄道事業機構」という公企業が運営しているのです。

従って、日本中の鉄道網が文字どおり一つにつながったわけではありませんが、機構により一括運営されています。それでは20世紀の国鉄分割民営化に完全逆行では?と思われるかもしれませんが、これは、他のすべての基幹産業(環境高負荷産業)が公企業として一本化されていることの一環なのです。

そうすると、かつてJRの他にもたくさんあった私鉄がすべて一つになってしまったのかと残念に思う人もいるでしょうが、すでに200年前にも、多くの鉄道会社が相互乗り入れ政策によって部分的には一本化されていたのですから、完全一本化はその延長と思えばよいと思われます。

とはいえ、日本もなかなか広いので、機構は地方圏ごとに設置された地方事業所を通じて分権的な運営がなされており、鉄道員の制服も事業所ごとに違っています。例外はオール・リニア化された旧新幹線のリニア線で、これはリニア高速線事業部という特設部が事業所の境界を越えて統合運用しています。

ちなみに、地方の閑散路線を廃止するかどうかについては沿線住民の直接投票にかけることが法律で義務づけられており、住民投票の結果、存続・ライトレール化されることが多いようです。

鉄道一本化で不便なことと言えば、路線名が紛らわしいことです。かつては同地域を走っていた競合路線だったものまで一本化されているため、似た名称の路線も多く、私のような旧世界人でなくとも、乗り間違いが生じやすいのです。

その点を除けば、一本化されて不便なことは特に見当たりません。運賃はなく、完全無料ですし、必要なサービスも行き届き、保守点検のような安全対策は商業鉄道時代よりも万全です。鉄道の競合化がサービス向上につながるというのは、20世紀的神話だったようです。 
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by komunisto | 2014-06-28 10:26 | 経済
2214年6月23日

以前、23世紀には開業医はほとんどいないとご報告したところ、では歯科診療はいったいどう担われているのかというご質問を21世紀の読者から受けましたので、回答を兼ねてご報告します。

歯科というと、かつてはほぼすべてが開業医だったため、貨幣経済の廃止に伴い開業医の旨味がなくなり、開業医がほぼ消滅すると、歯科診療は供給されなくなるのではないかとの懸念があるのでしょう。しかし、現在、歯科は主に公立の診療所によって担われています。

21世紀人にはなかなかイメージが湧かないのですが、公立歯科診療所とは市町村が直営する歯科診療所のことで、そこには複数の歯科医が所属し、大きな診療所では20人以上いることもあります。

昔の開業歯科とは異なり、一般歯科・小児歯科・老年歯科・矯正歯科・口腔科などの専門科に分かれており、専門分業化が進んでいます。完全予約制で随時急患受付という診療方式は昔とそう変わっていません。

このような公立歯科診療所は市町村に必ず複数箇所開設されていますが、昔の歯科医院のようにコンビニの数より多いとまで言われたほど多くはないので、通院が難しい高齢者や障碍者向けに訪問診療部が設置され、自宅で歯科診療が受けられるようになっています。

ちなみに、現在完全無償化が達成されていることもあり、インプラント術が高度に発達・普及しており、公立診療所でも普通に受けることができるとのことです。

その他技術的な面でいろいろ進歩があるようですが、23世紀世界に移り住んでから一度も歯科診療を受けていないため、詳しいことはわかりません。本当は受けなくてはならないのですが・・・。
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by komunisto | 2014-06-23 09:49 | 衛生
2214年6月18日

21世紀初頭の刑事ドラマでは科学捜査班の活躍を中心にしたものが流行のようになっていました。当時はあくまでもドラマですから、実際の犯罪捜査で科学捜査が中心になるようなことはなく、捜査の主流は旧来の取調べ中心の司法捜査でした。

200年後の現在では、かつてのドラマの世界が現実のものとなっています。法律上も「科学捜査先行の原則」が明記されており、取調べを中心とする司法捜査の前に、物証の収集とその科学的な分析評価を先行させなければなりません。

こうした原則に基づいて、警察には科学捜査課/部が独立した部署として設置されているのです。これは昔の鑑識課に当たるものですが、より専門的です。

まず科学捜査を担当するのは一般の警察官ではなく、科学者としての経歴を持つ科学捜査官と呼ばれる特別捜査官です。かれらは心理学を含む様々な科学を専門とする科学者であり、警察官とは別枠で採用され、警察官のような階級も持ちません。当然警察の他部署に配属されることはなく、科学捜査部門専従です。

他殺体が発見されたような場合は、まずこうした科学捜査官が先行して物証の収集・分析を行い、犯人像の心理学的なプロファイリングも行った上で、被疑者を絞り込み、司法捜査に移るという段取りとなります。その結果、昔のように強引な取調べで自白を迫るような捜査手法は消滅しています。

被疑者の取り調べに当たっても、その性格の心理学的な分析に基づく取調べ計画が立てられ、場合によっては心理学専攻の科学捜査官が取調べに立ち会うこともあります。否認する被疑者を刑事が取り囲んで怒鳴りつけるような乱暴な取調べはあり得ません。

ちなみに、変死体の検死は警察から完全に独立した検死官が行います。検死官は全員法医学を専攻した医師免許を持つ医官であり、検死官事務所に所属しています。

かくして23世紀の犯罪捜査は科学的な厳密性が増しており、自白偏重捜査による冤罪はもはや過去のものですが、冤罪がゼロというわけではありません。人間のすることですから、科学捜査が誤っていたり、不適切であったりすることもあり、科学捜査も絶対でないことはもちろんです。

ただ、現在では犯罪捜査への応用に特化した「犯罪科学」「犯罪医学」という科学・医学の応用分野が独立した領域として確立されてきており、多くの専門研究者を擁して科学捜査の正確性を高める学問的な努力が日々行われているところです。
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by komunisto | 2014-06-18 11:08 | 司法
2214年6月13日

23世紀人は全般に儀礼的な事柄に関心が薄いので、儀式の類を極力省略しようとする傾向があります。そのため、冠婚葬祭のあり方も200年前とは大きく変化してきています。

例えば、結婚式。前にも報告したように、結婚という制度自体廃止され、すべて登録パートナーシップに置き換わっていますから、「結婚式」なるものも存在せず、特別な儀式はしない人が多いようです。

ただ、人によっては親族や親友を招いて簡単な披露フェスト(パーティーのエスペラント語)を開くことはあるようです。しかし、これとて昔の「披露宴」ほど派手なものではありません。

ちなみに、かつての「ブライダル産業」も存在しません。結婚式場という専用ホールもありませんし、特別仕立ての結婚衣装的なものもありません。披露フェストもカジュアルな服装で行われます。

一方、葬儀についても、葬儀を専門に手がける葬儀屋は存在しません。一般に人が死亡した場合、居住する市町村に届出が必要な点は変わりませんが、そうすると市町村葬祭事務所が遺体の移送・火葬までやってくれます。

葬儀に関しては、家族親族だけで済ませる近親葬が多いですが、葬儀を希望する場合は市町村営の葬儀所を利用します。しかし多くの場合、火葬した後の告別式的な葬儀で、通夜のような前葬はしないのが一般です。

23世紀とやや異なるのは、子どもが誕生したときにも披露フェストをする習慣が見られることです。もちろんこれも派手なものではなく、身内や親友を招くだけの簡素なものです。 

ちなみに、出生届または死亡届を出すと、首長に相当する市町村民衆会議議長名で祝意状または弔意状が渡されます。民衆会議というだけあって、住民の生死は大切に扱われるようです。
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by komunisto | 2014-06-13 10:04 | 社会
2214年6月8日

21世紀以前の教科書では、紙の発明・普及は人類史上の画期的な進歩だと説明されていました。しかし、23世紀現在、紙の文明は終焉を迎えています。というのも、紙製品が激減しているからです。

前にもご報告しましたが、紙文明の象徴でもある書籍は、今やごく一部を除き電子書籍に移行しました。また事務の象徴であった紙書類もほぼ一掃されています。

商業活動が存在しないため、毎日山のように投函されていたチラシ類も皆無です。昔の店舗に当たる物品供給所でも、紙袋に包むのはよほど高級品の場合の贅沢で、日用品は包装紙を使わないので、そのまま受け取って持参したバッグや布袋に入れて持ち帰ります。

役所に提出したり、送られてきたりした公的文書類も一部例外を除き存在せず、すべて電子上で処理されます。高齢者でも、生まれたときからコンピュータが存在し、電子化教育を受けた世代ですから、全く不便はないのです。

ちなみに、トイレットペーパーも過去のものです。現在ではかつての水洗トイレと同じくらいに、洗浄機が携帯型を含めて普及・定着しているからです。

かつて製紙業は日本の得意分野でしたが、紙文明の終焉により製紙産業自体が廃れ、製紙は今や手工業的な高級伝統産業に戻りました。

こうした紙文明の終焉は、電子化の進展により自然にそうなったというより、森林保護や製紙工場による環境汚染防止、紙廃棄物の抑制といった環境規制の徹底強化により、政策的にもたらされたものです。

資本主義時代なら、製紙業界の利益に反するような環境規制は事実上不可能だったでしょう。しかし、そういうことが可能になったのも、貨幣経済によらない共産主義社会が実現されたからにほかなりません。
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by komunisto | 2014-06-08 11:11 | 環境
2214年6月3日

23世紀社会は平均寿命100歳台でありながら、重度の要介護者が少ないのはなぜか、という疑問を21世紀読者から受けましたので、これについても調べてみました。

答えは、認知症が顕著に改善する病気になったからです。改善するということは、治るということとは違いますが、薬物療法と心理療法を組み合わせることで、介護上さほど難儀しないレベルにまで改善できるようになったのでした。

薬物療法に関しては、21世紀から認知症治療薬の研究が鋭意進められていましたが、完全な治療薬は200年後の今も開発されていません。ですが、アルツハイマー病に関しては、進行を抑え、顕著に症状を改善できる薬剤が開発され、普及しているため、さほど恐るべき病気ではなくなりました。認知症を起こさせるその他の病気に関しても、有効な症状改善薬が出ています。

こうした薬物療法に加え、認知症の心理療法の普及も後押ししています。これは記憶や言語を回復させ、感情をコントロールする臨床心理的アプローチとして、薬物療法と併用して行われます。

このような認知症の薬物‐心理療法の最前線は、「総合神経科」という新しい診療科です。これは旧来の精神科と神経内科を統合したような総合診療科で、23世紀の医療ではスタンダードとなっています。かつては認知症の診療窓口がばらばらで、どこを受診すべきかわかりにくかったことも、早期受診をためらわせる一因でしたが、その問題が克服されています。

こうした総合神経科の臨床を支える基礎科学が、人の脳神経の構造と言語・認知などの精神活動の関わりを研究する「神経心理学」で、22世紀から23世紀にかけてこの学問が飛躍的に進歩し、現在では基礎医学の一分野として確立されているそうです。

とはいえ、人間の複雑な神経系と精神活動の関わりを解明することは容易でなく、認知症の発症メカニズムも完全に解明するには、さらなる研究が必要であるようです。 
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by komunisto | 2014-06-03 14:16 | 衛生