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2214年10月30日

ホスピスという言葉は、21世紀の皆さんもご存知かと思います。死を目前にした人の終末期ケアをする施設のことです。23世紀には「緩和施療院」といういかめしい正式名称が与えられているのですが、通称では今でもホスピスと呼ばれます。

ホスピスは、沿革的には宗教系慈善事業として始まったことから、かつては私立の施設が多かったのですが、現在では、公立のホスピスが各地にあって、終末期の患者が病院や在宅から移行する形で、最期を過ごします。地元S市にも一か所設置されており、先日見学してきました。

ベッド数は70床と案外大きな施設で、看板が出ていなければ小規模のマンションと見紛うような外観です。中に入ると、ホテルのような雰囲気で、看護師や医師も白衣を着ていないのが特徴です。つまり、病院風の雰囲気を極力排除しようとしているのです。

そうすることにより、一般住宅のような雰囲気の中で、最期の時を穏やかに過ごしてもらおうという趣旨です。もちろん、穏やかといっても、末期がんなどになると、痛みを緩和する医療的処置は必要になりますが、治療目的ではないので、なるべく病院風にはしないわけです。

このあたりは21世紀のホスピスとそう変わらないところだと思いますが、もう一つの特色はホスピスが在宅ケアにも対応することです。つまり、在宅で最期を過ごしたい人や、定員の関係上ホスピスに入所できなかった人向けに訪問サービスにも対応するのです。

こうした終末期ケアが充実した結果、病院では重体搬送者を扱う救急部を除き、看取りをしなくなっています。つまり末期になると、病院からは退院を迫られるのです。もちろん終末期ケアにつなぐ手はずは整えてくれますが、23世紀に病院死は原則としてありません。

これは一見冷徹な対応にも思えますが、病院はあくまでも治る病気を治して帰る場所で、自然に還っていく終末期ケアはホスピスでという機能分化が徹底しているのです。このような発想は、23世紀人の合理的な死生観に沿うもののようです。
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by komunisto | 2014-10-30 13:00 | 死生
2214年10月25日

23世紀未来社会の法制度的な面で一番大きく変わったのは、犯罪を犯した人の処遇に関わる制度だと思います。以前、報告したように、23世紀の地球上にはもはや刑罰制度がありません。刑罰という制度は、リンチと同様、過去の野蛮の象徴だとみなされているからです。

犯罪を犯した人に対して実際どのような処遇をするかは、国に相当する各領域圏によって若干の違いがありますが、日本の場合は、身柄を拘束しない保護観察と、拘束する矯正処遇とに分かれています。今回、報告するのは後者の矯正処遇についてです。

矯正処遇は矯正所という施設に身柄を拘束される処遇であり、重罪犯に対する処分です。かつての懲役刑に似ていますが、刑罰ではないので、個別的な人格矯正に重点が置かれます。

矯正所は旧刑務所を改装した施設が大半ですが、事前予約すれば見学が許されているので、比較的近場の矯正所を見学してみました。

まず、昔の刑務所と違うのは、塀がないこと。柵と出入り口での警備官によるチェックはありますが、外観は病院のような感じです。入所者の自由な出入りはさすがに認められませんが、外出は職員同伴なら許されるそうです。

内部も鉄格子なしの個室制で(覗き窓あり)、まるで入院病棟のようなつくりになっています。制服の刑務官はおらず、矯正官と呼ばれる私服のスタッフが入所者の矯正指導に当たります。懲役刑ではないので、工場労働もなく、矯正は心理的なカウンセリングや集団面接などが中心になります。

収容期間も、予め何年と判決されるのでなく、罪状ごとに定められた一定年数を一単位とする更新制で、最大延長10年だといいます。21世紀人なら、殺人を犯しても10年?!と唖然とするかもしれませんが、あくまでも刑罰ではないので、10年でも長過ぎるという批判があるほどです。

もっとも、非常に矯正が困難な人のために、保安上の観点から終身間拘束可能な終身監置という究極の重い処分も用意されていますが、現時点でこの処分に付せられている人は、全土で50人程度とのことです。

23世紀の世界では、犯罪原因のナンバーワンだった貨幣経済が廃されたことで、全般に犯罪が激減していますから―これも、全世界的な傾向です。―、矯正所の数や収容人員も少なくて済み、その分、一人一人に働きかける個別処遇がしやすい環境が確保されているようでした。
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by komunisto | 2014-10-25 10:10 | 法律
2214年10月20日

23世紀の世界へやってきてしばらくして気がついたのは、眼鏡をかけた人を見かけないことです。目の悪い人はいなくなったのか。もちろん、そうではありません。眼鏡という器具が必要なくなったのです。

もっとも、子どもの近視に関してはよほど進行しない限り、矯正眼鏡の使用が推奨されるので、子供用の矯正眼鏡は残されています。またファッションや紫外線防護のためのサングラスも使用されるので、正確には、大人用の矯正眼鏡は必要なくなったということになるでしょう。

理由は、視力矯正手術が標準治療として定着したからです。21世紀中にもいわゆるレーシック手術法が普及し始めていましたが、23世紀の視力矯正手術は目の中にレンズを移植するというインプラント手術法です。

このようなインプラント術も技術としてはすでに21世紀から開発されていましたが、レーシックと比べて、短時間で安全に施術でき、予後も良好ということで、レーシックに取って代わったのです。こうしたインプラント術は、近視に限らず、遠視や老眼にも適用できるようになっているため、老眼鏡も必要なくなっています。

また、病気や負傷により後天的に失明した人や一部の先天性視覚障碍者向けのインプラント術の研究開発も進んでおり、視力矯正をめぐる技術の進歩には目覚しいものがあります。

それでも不慣れな医師による不手際で失明したりしないかという不安は残りますが、現在では視力矯正を専門とする矯正眼科という診療科が一般眼科とは独立して開設されるようになっており、矯正眼科専門医の資格がなければ施術できないという縛りがあるため、不幸な医療ミスがない限り、専門医による安全な施術が受けられます。

問題は費用?という心配は無用です。もう当ブログではいろいろな記事でご紹介してきたように、23世紀の社会は眼鏡のみならず、貨幣からも解放されていますから、どんな高度な治療も無料で受けられます。
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by komunisto | 2014-10-20 08:36 | 衛生
2214年10月15日

アフリカと言えば、21世紀までは貧困、紛争というイメージの強い地域で、事実そうした問題が集中していました。一部の諸国では資本主義がある程度軌道に乗り、経済発展を見せ始めてもいましたが、それは格差や腐敗を伴う歪んだ「発展」でもありました。

200年を経て、現在はどうでしょう。おそらく、アフリカはこの200年で最も劇的に変化した地域です。もはや貧困や紛争は過去の悲劇。今や、アフリカは洗練されたクール(エスペラント語ではチャルマ)な地域として、文化的にも世界の注目を集める場所なのです。

そうなったのも、貨幣経済・資本主義の廃止という革命的な変革の恩恵です。アフリカの伝統的な共同体生活は元来、資本主義より共産主義に適合的にできていました。それを無理に資本主義的な経済開発路線に乗せようとしたことが、アフリカを苦しめていたのです。

貨幣収入を得るのに苦労の多かった農村でも、貨幣経済の廃止により自給自足生活が可能となり、豊かな農村が回復されました。地球温暖化が緩和されたため、干ばつ被害も最小限で済んでいます。

豊かになったことで、寿命が延びると同時に人口爆発現象にも歯止めがかかり、多子若年化でも、少子高齢化でもない、中子高齢化が最適条件で実現されており、人口問題でも23世紀のアフリカは模範的です。

そうした点で、かつてアフリカ自身が拒んでいた面もある共産化は、アフリカ的問題の最高の治療薬となりました。そればかりか、アフリカを世界でも最も洗練された地域へと発展させ、共産主義的成長のモデルにまで押し上げたのです。

そのため、世界が共産化された現在、その中心がアメリカでなく、アフリカであることは必然と言えるでしょう。実際、世界を束ねる世界共同体の本部―旧国際連合本部に相当―は、ニューヨークではなく、南アフリカ領域圏の最大都市ヨハネスブルグにあります。
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by komunisto | 2014-10-15 10:07 | 経済
2214年10月10日

20世紀後半から21世紀にかけては、航空宇宙開発の時代でした。この時代、米国を中心とした世界の技術先進各国は競争的に宇宙開発を展開し、宇宙空間を軍事的・商業的に利用する野心を隠そうとしませんでした。

しかし、23世紀の現在、こうした「宇宙開発」という発想は大きく転換されています。現在、宇宙は「探査」の対象であっても、「開発」の対象ではありません。

国という政治単位が存在しないため、国ごとの競争もないことは当然ですが、宇宙探査は世界共同体の専門機関である世界航空宇宙機関が一手に担っています。以前にも報告したように、今や身近になった宇宙旅行をコーディネートするのも、この機関に属する宇宙観光局です。

しかし、世界航空宇宙機関の主任務は、まさに宇宙探査です。それは純粋に研究的なもので、軍事的な性格は持ちません。かつて、異星人との宇宙戦争を題材にしたアニメが人気だった時代もありますが、このような文化現象は宇宙の軍事利用という政策ともリンクしていたのでしょう。

宇宙の軍事利用があり得ない現在、今やそのような文化現象は見られません。現在の宇宙系アニメは、宇宙戦争より、異星間での平和的な外交関係や異星人との友情や恋愛を題材にしたものが主流です。

異星人はいまだに発見されていませんが、衛星の飛翔距離が伸びた現在、地球人が異星に向けて探査衛星を飛ばす時代になりましたから、ひょっとすると、どこかの天体で異星人のほうがUFO現象にとりつかれているかもしれません。

ちなみに、宇宙空間は誰のものかという究極の問題がありますが、宇宙探査に関する世界条約である新宇宙条約によると、宇宙空間は誰のものでもない自然の空間と定義されています。また天体の所有も禁止されています。
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by komunisto | 2014-10-10 11:32 | 政治
2214年10月5日

23世紀にはいろいろとユニークな職業が生まれていますが、臨床哲学士というのもその一つでしょう。臨床哲学史とは哲学の専門家ながら、書斎で沈思する哲学者ではなく、主に組織に所属して哲学・倫理的な問題の解決に当たる専門職です。

こうした臨床哲学士が一番活躍しているのは、病院やホスピスです。医療機関では、治療の技術的な問題ばかりでなく、哲学・倫理上の問題が現場で発生したとき、医師や看護師など医療者だけでは解決できず、苦悩する場合もあるため、臨床哲学士の出番となるわけです。

特に23世紀にはいっそう高度に発達している生殖医療の現場は倫理問題が山積するため、倫理的な問題の処理では臨床哲学士の役割が大きく、問題解決の最終責任者となります。また終末期医療でも、患者や家族からの生と死をめぐる相談に乗り、どのような終末がふさわしいか、助言もします。

現在、大きな総合病院には「臨床哲学外来」という窓口を開設している例も見られ、ここでも、心理相談に当たる臨床心理士とは別に、臨床哲学士が重大な病気の診断を受けた人や、難病の治療中の患者などからの人生相談的なことを担当しています。

そのほか、臨床哲学士の中には相談所を開設したり、自宅への出張相談をサービスしたり、自営的に活動する人もあって、これも結構利用されているようです。

臨床哲学士になるには、臨床哲学士協会が主催する講習を受けたうえで、資格試験に合格し、暫定資格認定された後、指定研修機関で実務研修を受け、最終試験に合格して初めて正式に資格認定されるという本格派の業務資格となっています。

哲学と言えば、実用至上の資本主義時代は役立たずの学問とみなされ、臨床哲学士などという職業も成り立ちませんでしたが、貨幣経済が廃された現在、社会の価値観も大きく変容し、「無用の用」(老子)としての哲学が復権しているようです。
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by komunisto | 2014-10-05 10:58 | 思考