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2215年2月24日

23世紀に飛んできてしばらくすると、近所に学校に通っていないように見える子どもが少なからず存在するようなので、調べてみたところ、その訳がわかりました。それは、23世紀の学校が選択的通学制を採用しているためでした。

選択的通学制とは要するに、学校に通学するかどうかは子どもと保護者の選択に委ねられるという制度です。通学しない選択をした場合は、自動的に通信コースに編入されますので、一切学校教育を受けないという選択は許されません。

以前の記事でご報告したように、23世紀の学校制度は義務教育の期間を13年間に延長しつつ、通学/通信を選択式にして、柔軟な制度に設計されているわけです。なお、通学/通信の選択は学期の節目であれば、いつでも自由に切り替えが可能という極めて柔軟性の高い制度です。

ただし、例外があり、健康体育と生活技術という実技系科目だけは、その性質上通信受講は不可能なことから、一律に通学が義務づけられているため、結果として通信生でも週何日かは部分的に通学する日があります。

とはいえ、義務教育は通学オンリーという時代を経験した者には、13年間ずっと通信制で学ぶとなると、いわゆる社会性の涵養が疎外され、ある種の引きこもりになってしまうのでは?という心配も浮かびます。この点、教育関係者に尋ねてみると、怪訝な顔をされ、おおむね次のような回答をされました。

23世紀の学校は社会性云々ではなく、生徒個々の資質や適性を発見し、それを伸ばす手助けをすることに重点を置いているところ、学びのスタイルについては通学/通信いずれでもよく、自分に向いたコースを選択するほうがむしろ身につきやすい、と。

なるほど、23世紀的な合理主義思考に基づく教育観であると思います。考えてみれば、学校嫌いで毎朝の通学に苦痛を感じていた筆者にとっては、羨ましい制度です。

もっとも、社会性の涵養も無視されているわけではなく、それは学校とは切り離して、地域少年団という公的な集団活動の役割とされているそうです。これは通常の教育とは別立てとなっているため、改めてご報告することにします。
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by komunisto | 2015-02-24 09:50 | 教育
2215年2月18日

今回は、前々回の記事で予告していた自治体が運営する登録パートナーシップのパートナー・マッチングサービス―言わば、公営結婚相談所―についてのご報告です。

今、21世紀人にもわかりやすくするため、「結婚相談所」になぞらえましたが、たびたびご報告しているように、23世紀には結婚という制度は登録パートナーシップ制度に置き換わっているので、厳密な言い方ではありません。

21世紀まで、この種のサービスは「結婚相談所」の名で民間の営利事業としてよく行われていましたが、貨幣経済の廃止に伴い、そうした営利的結婚相談事業も消滅し、今や公的サービスに移っているのです。

しかも、このサービスは自治体のお節介ではなく、法律で市町村ごとに設置が義務づけられたれっきとした公的サービスです。筆者のような旧世界人的感覚では、自治体がそこまでする必要があるのか疑問も多少ありますが、23世紀の自治体の役割は生活全般のサービスととらえられているので、こうした縁結びのサポートも仕事の内とみなされているようです。

さて、このサービスの仕組みですが、マッチングを希望する人は原則として自身が居住する市町村に所要データを登録します。データの登録は地方圏(例えば近畿とか東北など)の広域的レベルで共通化されていますので、その広域圏内の登録者とマッチングされます。

登録パートナーシップは異性間・同性間どちらの組み合わせも認められるため、同性パートナーのマッチングサービスもあり、登録者は自由に選択することができます。

マッチングに際しては、心理学的な知見も踏まえたコンピュータ解析で精密に相性が分析されるため、自分で相手を探すより、効率的な面もあるようです。

マッチする相手がヒットすると、登録者に通知され、双方の合意が得られれば、指定された場所でコーディネーターが最初の対面をセットし、以後も継続して会う場合は当事者同士で決めます。ちなみに、この制度を悪用して性犯罪その他の不正行為を犯した者は、登録抹消と同時に不正行為者のブラックリストに搭載されてしまいます。

またこうした制度にはつきものの不安材料となる個人情報漏洩に関しては、各自治体ごとに個人情報保護監という独立した監察機関が置かれ、情報管理に目を光らせていますから、21世紀よりも安心なぐらいです。

ちなみに、地元地方圏のデータによると、登録パートナーシップのおよそ42%がこのサービスを介して成立したとのことで、半分弱が利用している計算になります。
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by komunisto | 2015-02-18 11:22 | 人生
2215年2月12日

前々回の記事で、トリリンガルな言語人の育成を目指す23世紀の外語教育について報告しましたが、これは少し修正する必要があります。というのは、四つめの「言語」として、手話が必修とされているからです。

手話には、母語手話とエスペラント手話の二種類がありますが、とりあえず学校で必修科目となっているのは、母語手話のほうです。日本なら、言うまでもなく、日本語手話です。

21世紀には手話というと、聴覚障碍者向けのコミュニケーション手段と考えられていましたが、23世紀の手話は、ボディーランゲージの代表として、非障碍者も身につけるべき「言語」だと考えられているのです。

従って、手話は特殊な授業ではなく、「言語」という科目の中で扱われます。この「言語」とは、かつての国語にエスペラント語及び近隣外語、手話まで併せて、言語全般の運用能力を総合的に涵養するすぐれて23世紀的な授業科目です。

こうした手話必修化も世界レベルで実践されているため、基礎教育を修了した23世紀人なら、普通に母語の読み書きができるのと同じレベルで母語手話もできます。またテレビ番組は原則として手話通訳が法律で義務づけられています。

面白いのは、非障碍者同士でも、少々おどけて手話で会話する光景が見られることです。実際、23世紀人はその気になれば、すべて手話で会話し合うことも可能なわけです。

そんな光景を見るにつけ、筆者が20世紀後半に受けた音声言語至上主義的な―それも国語と英語に偏った―旧言語教育は、いかに人間の言語運用能力を制約し、ひいては思考世界をも狭めていたか、痛感させられます。
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by komunisto | 2015-02-12 09:28 | 教育
2215年2月6日

23世紀には婚姻の制度が大きく変革され、結婚制度(法律婚制度)はよりインフォーマルな登録パートナーシップ制度に変化していることについて、これまでにも、いくつかの記事でご報告してきました。

この制度の下では、もはや夫と妻という性別役割関係もなく、どちらも完全対等なパートナーです。ですから、男性同士、女性同士のパートナー関係も全く自由です。

これによって、「嫁」という語は死語になりました。辞書にはまだ搭載されていますが、【死語】もしくは【廃語】の表記が付され、「旧結婚制度の下で、妻の別称」などと解説されています。辞書によっては、「女性配偶者を家政婦扱いする古い男性優位の観念に基づく用語」といったご丁寧な注記をしているものまであるほどです。

こういう次第ですから、当然、「夫は仕事、妻は家事育児」などという性別役割分担は全く見られません。パートナー同士は仕事も、家事育児も対等分担が常識です。古い性別役割分担の習慣が根強く残されていることで悪名高かった日本社会も、この点では革命的に変化しています。

女性陣にとっては、まさに「家付きの女」=「嫁」という古い従属的地位からの解放の時代の到来ですが、男性陣はどう思っているのか、周囲に聞いてみると、特に不満はないようです。男性にとっても、「夫」という役割に束縛される旧結婚制度は良くないという意見も見られました。

一方、こうしたインフォーマルで対等なパートナー関係は解消されるのも早いのではないかと予想したのですが、予想は外れました。統計上解消(離婚)に至るパートナーシップは全体の20パーセント程度で、大部分は長持ちしているようです。

その理由はまだはっきりと把握できていないのですが、一つには自治体が運営するマッチングサービス―言わば公共結婚相談所―が効果を発揮しているようです。これについては、稿を改めてご報告しましょう。
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by komunisto | 2015-02-06 14:11 | 社会