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2215年7月30日

23世紀の社会における日常生活で20世紀のSF的な感覚に最もとらわれるのは、住宅設備です。住宅は過去200年間で最も大きく進化した生活手段であると言えます。といっても何からご報告すべきか迷うのですが、まずは玄関から。

かつて住宅には鍵が必需で、鍵をなくすと一騒動でしたが、23世紀住宅は鍵でなく、カードキーで開ける仕組みがすべての住戸に導入されています。もっとも、鍵も廃止されたわけではないのですが、鍵はカードキーを紛失した場合に備えた予備的開扉手段にすぎません(どちらか一方を紛失しても、セーフなわけですね)。

次に住戸内の光熱設備ですが、これらは音声入力により自動でオン/オフの切り替えをする方式が一般です。ただし、発声できない場合に備えて、手動スイッチも付置されていますので、どちらを使うかを選択することができます。また窓の開閉・施錠も音声入力による自動となっていることが多いようです。

こうした住宅IT化は実のところ、すでに前世紀までにだいたい整備されていたのですが、23世紀住宅の大きな特徴は、バリアフリー化が高度化していることです。先の音声入力もその一つですが、他にもあります。

例えば、私有以外の公営住宅のトイレ・バスは、初めから障碍者仕様に設計されており、障碍のいかんにかかわらず使えるようになっています。また屋内の段差がなく、ベランダとの境目もスロープになっています。こうした設計は、公営住宅の場合は法律で義務付けられているのです。

ちなみにバリアフリー化は、住文化的な面でも日本で長く保持されてきた靴を脱いで上がる習慣をほぼ一掃し、土足型に変化させました。これにより、日本家屋に付き物だった玄関の段差が消失し、車椅子のまま入室することも可能となっています。

さらに公営住宅の場合、家具などの調度品は初めからリユース品がセットで備わっており、すべて自分で導入する面倒はありません。ただ、必要なものを追加したり、どうしても気に入らない既設品を交換することもできるようになっています。

なお、私有住宅の場合、設備はすべて所有者が好みに合わせて設計できるので、上記のことは必ずしも全面的には当てはまりませんが、以前のたよりでご報告したように、23世紀における私有住宅の割合は全体の4割程度に減少しています。
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by komunisto | 2015-07-30 09:58 | 生活
2215年7月24日

先般、中央民衆会議傍聴のご報告をしましたが、中央民衆会議も旧国会と同様、否、それ以上にたくさんの常任委員会を擁しています。その中で最も影響力の強い常任委員会はと言うと、環境持続性委員会になります。

この委員会は、名称のとおり環境政策全般の立案と法案作成を所管する常任委員会で、旧国会では環境委員会に相当します。ただ、旧環境委員会がどちらかと言えば地味で、所属を希望する議員も限られていたのに対し、環境持続性委員会のほうは中央民衆会議の花形として人気なのだそうです。

ちなみに、旧国会で最も強力な委員会はおそらく予算委員会であったと思われますが、これはまさに貨幣経済下で国の運営の基盤であった政府予算を扱う委員会だったからでしょう。貨幣経済が廃止された現在、予算なる制度自体が存在しませんから、予算委員会もありません。

代わって政策の軸は環境になっており、あらゆる政策が環境的な枠組みによってコントロールされることから、環境持続性委員会が事実上の筆頭的な常任委員会として強い影響力を持つようになっているのです。

現在、中央省庁という制度は存在せず、民衆会議が立法機関であると同時に行政機関でもあるという地位にあるため、各常任委員会が即行政機能も果たします。従って、環境持続性委員会は旧環境省の機能も果たす環境政策の元締めなわけです。

そうした大きな常任委員会だけあって、委員は200人近くもおり、10の小委員会に分かれて、日々環境政策の立案と審議に当たっています。中でも環境影響評価小委員会がエース格で、名称のとおり領域圏が担当するあらゆる政策・公共事業等の環境影響評価を担当し、ダメ出しをする権限を持っています。

旧国会と異なり、民衆会議は市民とのつながりが強いので、一定の署名条件を満たせば、市民が環境持続性委員会に対して特定の事業案件に関する環境影響評価を請求することもできるなど、市民からの突き上げにも答えることがあります。

また同小委員会は各地に設置された環境保全事務所を管轄しており、ここには「環境Gメン」と渾名される環境犯罪に対する警察権をも与えられた環境保全調査官が配置され、強力な環境的目付け役を果たしています。
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by komunisto | 2015-07-24 00:00 | 環境
2215年7月18日

先日、中央民衆会議議事堂のある名古屋までリニア高速線で東京から50分と書きましたが、このリニア高速線とは、そちら21世紀初頭の日本で政治問題化している中央新幹線のことではありません。これは旧「東海道新幹線」です。

23世紀のリニア高速線は、既設の全新幹線網を継承・統合する形で、東京と新大阪を基点に北端は旭川、南端は鹿児島中央までを一本に結ぶリニア高速線網に整理されており、「新幹線」という呼び名も「リニア高速線」に改称されているのです。

一方で、反対運動を押していったんは開業にこぎつけたリニア中央新幹線のほうは、革命後に廃止されました。理由は、環境破壊問題や地下鉄区間が多く、観光的にもマイナスだったことです。要するにリニア新幹線を新設することは経済合理性を欠くと判断されたのです。

そこで、革命後に、既存新幹線のオール・リニア化事業という形で、リニア高速線網の建設が始まりました。しかし、ほとんどの区間が高架線である既存新幹線をリニア化するというのは、大胆な計画のように思われますが、どのように克服したのか。

まず、何度も指摘してきたように、貨幣経済が廃されたことで、建設費の負担に悩む必要がなくなったことがあります。また中央リニア線で問題とされた超高速走行に伴う風切り音問題は、超高速走行区間を最小限にとどめるという実に単純な方法で解決したのです。

それでは夢の超高速走行というリニアの利点が生かされないのでは?と思われるかもしれません。しかし、以前のたよりでもご報告したように、23世紀の社会は徒にスピードを追求しません。リニア高速線にしても、例えば富士山付近のような風光明媚区間に到達すると、指定速度を落として走行したりします。

23世紀のリニア線の標榜最高可能速度は時速700キロに達していますが、実際の指定最高速度は600キロに抑えられ、しかも600キロ走行区間は人家が少ない区間などに限定されています。全体の平均時速は400キロ程度とされます。

とはいえ、リニア高速線で東京から名古屋まで50分ですから、旧新幹線の約半分の速達です。新大阪‐名古屋間はわずか30分弱ですから、中央民衆会議代議員の中には「リニア通勤」している人も少なくないとのことでした。
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by komunisto | 2015-07-18 09:46 | 経済
2215年7月12日

計画経済最前線の経済計画評議会の傍聴に続き、今回は政治的な代表機関である中央民衆会議の傍聴にも行って参りました。経済計画評議会は横浜でしたが、中央民衆会議は名古屋にあるため、リニア高速線を使って、東京から50分ほどです。

以前のたよりでも報告したように、23世紀の東京はもはや政治の中心地ではなく、主として学術都市として機能しています。政治の中心は、日本本土のちょうど中央付近にある名古屋であり、まさに中央民衆会議所在地なのです。

名古屋市郊外にある中央民衆会議議事堂に就いてみると、それは美術館のような外観を持つ巨大なビルで、現在は憲政博物館となっている東京の旧国会議事堂とは大きく異なっていました。一階はレストランやその他の物品供給所が入っていて、21世紀ならちょっとしたショッピングモールのように、一般市民が普通に出入りしているのも、まさに民衆会議にふさわしい光景でした。

中央民衆会議は21世紀までの制度で言えば国会に相当しますが、以前のたよりで報告したとおり、代議員は投票ではなく、有資格者(代議員免許取得者)の中からくじ引きで抽選されます。代議員は地元ボスや学歴エリートではなく、普通の市民の中で免許を持つ人という程度の存在です。

二階の議場に入って早速傍聴すると、代議員は皆私服で、男性でも背広姿はありません。これは実は全世界共通で、以前のたよりでも報告したように23世紀はカジュアル社会だからです。堅苦しさはなく、市民集会のような光景で、これも民衆会議の名にふさわしく思われました。

さらに、旧国会との大きな違いとして、人数が多いことです。定数が2000もあるため、本会議場はまるでコンサートホール並みの広さです。この人数で審議ができるのかと思われますが、実際のところは細かく分けられた小委員会のレベルで実質審議がなされ、本会議は総論的な審議の場ということで成り立っているようです。

小委員会も原則的に公開されていますが、会議室のスペースから裁判のように抽選傍聴制となっています。この日はたまたま空きがあった教育関係の小委員会の一つを傍聴しましたが、ラウンドテーブル方式で活発な討議が行なわれていました。

さらに旧国会との大きな違いとして、女性や障碍を持つ代議員の多さがあります。女性に関してはそもそも定数が男女半数制であるため、2000人のうち1000人は必ず女性となるのです。障碍者の率は特に決まっていませんが、審議資料の点字化など障碍者の参加支援策が格段に充実しているため、自ずと障碍者代議員の数も増えるのだそうです。

中央民衆会議はまさに民衆の代表機関として、社会の縮図のような構成を持っているのです。従って、国会に相当する機関といっても、それはあくまでも形式的な比喩であって、男性富裕層中心の旧国会とは似て非なるものと言ってよいでしょう。
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by komunisto | 2015-07-12 11:33 | 政治
2215年7月6日

23世紀世界の最大の目玉は、計画経済です。これは日本に限らず、かつては強固な資本主義大国であったアメリカを含め、全世界で行なわれています。世界共同体は、そうした計画経済の司令塔的な役割も果たしています。

計画経済の具体的なやり方は世界共同体を構成する各領域圏によって若干の違いはありますが、通常は経済計画評議会(以下、評議会という)という会議体が担っています。言わば、計画経済の最前線です。評議会の審議は公開されており、先日見学してきました。

評議会の議事堂は東京ではなく、横浜にあります。一見すると、議会の議事堂のようです。実際、評議会は基幹産業分野の企業体の代表者で構成される一種の議会のようなものであり、官庁ではありません。

議場も議会のようなセッティングになっており、各評議員がそれぞれの個別計画案を持ち寄り、それをめぐって審議し、最終的な総合計画案に仕上げていきます。内容的には、経済政策限定の議会のような観があり、それなりの知識がないと理解が難しい高度な審議をしていました。

評議会は官庁ではないとはいえ、事務局を擁し、ここには環境的な観点から経済分析をする専門家である環境経済調査士という資格を持つ専門員が配置され、経済計画に必要な統計資料の作成・提供などの補佐業務をこなします。審議にもこうした専門員が参考人として出席し、求めに応じて詳細な統計などの報告を行なっていました。

計画経済は三か年計画を基本としているため、評議会の本会議が開かれるのは三年に一度ですが、評議会は計画期間中も経済計画の実行をモニターする責務を負い、必要に応じて計画を修正することもできるため、常設会議として機能しています。

ちなみに、23世紀における議会に相当する政治的な代表機関は民衆会議であり、こちらは名古屋に所在しています。民衆会議と評議会の関係は二院制的なものとされますが、民衆会議優越原則により、評議会の計画案が発効するには、民衆会議の承認決議を要します。

評議会は専門性の高い会議のせいか、傍聴人はまばらで、ほとんどは民間の経済専門家や研究者らしき人たちでしたが、野次などの不品行は一切なく、まるで専門学会のような高品質な審議が行なわれていたのが印象的でした。
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by komunisto | 2015-07-06 09:15 | 経済