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2215年9月28日

23世紀の司法制度に関しては、これまでにも折に触れてご紹介してきていますが、今日は公証人についてです。公証人とは特定の事実の存在または契約等の法律行為の適法性等について、公的に証明·認証する法律専門家のことをいいます。

この職業そのものの歴史は古く、日本では20世紀初頭から存在していましたから、すでに300年以上の歴史があります。では何が23世紀的かといいますと、その活躍の範囲です。かつての公証人は上の定義のように、まさに公的な証明をする代書人的な存在でしたが、23世紀の公証人は弁護士と並ぶ法曹として位置づけられているのです。

たびたびご紹介しているとおり、23世紀社会は貨幣経済ではありません。よって、司法の世界でも、圧倒的に金銭トラブルの法的処理に携わっていた弁護士の職務内容が大きく変容し、その比重も下がった一方、各種の公的証明に当たる公証人の比重が高まったのです。

それとともに、国家の廃止に伴い、いわゆる役所というものが存在しない23世紀には、役所の公的証明に相当する証明行為も公証人が行なうようになっており、そうした点でも公証人の比重は高まっているのです。

その職務範囲は広いのですが、訴訟業務は現在も弁護士独占領域のため、公証人は訴訟を担当することはできません。しかし法廷に提出する証拠書類の公的証明は重要な任務の一つで、公証人の公証を受けた書類には高い証拠価値が認められるため、弁護士と公証人は提携することが多くなっているようです。

こうしたことから、日本の旧慣ではほとんどが検察官や裁判官の実質的な「天下り」であった公証人の任用方法も大きく変わり、公証人も統一的な法曹資格試験に合格し、所定の研修を受けた者から任用されるようになりました。現在では、弁護士以上に志望者が多いそうです。

ちなみに、日本の旧公証人は公務員で、その事務所は「公証役場」と呼ばれていましたが、23世紀の公証人は弁護士と同様の在野法律家であり、その事務所も「役場」ではなく、「公証事務所」と呼ばれます。ただし、公証という公的業務の性質上、管轄高等裁判所の監督を受けます。

なお、貨幣経済廃止に伴い、公証人が依頼人に金銭報酬を請求することはありません。依頼人から非金銭的な物による報酬を受け取ることも汚職行為として違法ですから、業務はすべて無償で行なわれます(この点は、弁護士についても同様)。
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by komunisto | 2015-09-28 09:13 | 司法
2215年9月22日

23世紀という時代には、多くの文物・制度が200年前とは大きく変革していることは、これまでいろいろご報告してきたとおりなのですが、一つ手前の22世紀について教えてほしいとのお便りを読者よりいただきました。

実は、21世紀から23世紀に直接タイムトラベルしてきた私は22世紀という時代を直接体験していません。そのため、22世紀に関しましては、23世紀の史料によってお答えするしかありません。

そういう前提で申しますと、22世紀はまさに人類史上の大転換期だったと言えます。実際、現在2215年は23世紀が始まってまだ15年目ですので、その文物・制度の多くは22世紀のものを引き継いでいるわけです。そのため、22世紀のことは同時にご紹介しているに等しいのですが、22世紀は20世紀と同様、前半と後半とで大きく様相を異にしていました。

22世紀前半は、21世紀末から22世紀初頭にかけての世界連続革命―世界大革命とも呼ばれます―が一巡し、世界が資本主義から共産主義に塗り替えられた時期に相当します。この22世紀前半の50年はまさに激動の時代でした。21世紀までは常識とされてきた貨幣経済とか国家体制といった基本的枠組みとそれにまつわる諸々の諸制度・慣習のすべてが変わったのです。

その変化のスピードと急進性は、20世紀後半のそれに比せられていますが、歴史家によってはそれを上回る人類史上最大級の変革期だったとみなす人もいるほどです。世界の人々も、その変革についていくのが大変だったようです。

特に、貨幣経済の廃止によって、空気のごとく馴染んでいた貨幣という媒体が消え去ったことは変革のハイライトであり、日常の衣食住の根幹が大きく変わりました。本日から貨幣を廃止すると言われたその当時の人々の驚きが目に浮かびます。

その激動期を体験した方の話も聴きたいのですが、2215年の現在、100歳の古老でも2115年生まれで、激動期には乳幼児でしたので、激動期の暮らしを成人として体験したのは古老の親世代の人たちということになり、もはや存命していないのは残念です。

ただ、22世紀初頭の暮らしを体験した当時の著名人の証言を集めた電子書籍がありましたので、それを紐解いてみると、やはり貨幣が廃止された時は大騒ぎで、それまで当たり前のように貨幣と交換していた物品やサービスがすべて取得数量制限付きの無償となったことに体が馴れるまでに時間がかかったという体験が綴られていました。

一方、22世紀後半は、共産主義社会の成長期に当たります。激動が一段落し、新たな文物・制度が定着・発展を遂げていった時代です。23世紀初頭に現在する文物・制度の多くがこの時代に基礎が築かれたものです。

そうした意味では、23世紀未来社会としてこれまでご紹介してきた事柄は、実質上22世紀後半期の延長と言えるわけで、あと85年を残す23世紀という時代はこれからなのですが、私の寿命は世紀末までは持ちません。
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by komunisto | 2015-09-22 07:25 | 社会
2215年9月16日

23世紀の世界では、麻薬が合法化されている。こう書くと正確を欠くのですが、少なくとも一律に麻薬を違法とする政策は採られていません。麻薬を一律違法化すると、闇組織が横行するという過去の苦い経験に学んでいるからです。

といっても、麻薬使用が全面的に合法化されているわけではなく、世界保健機関のガイドラインに従い、嗜好としてでなく、治療目的の製造・使用のみが許されているというのが正確です。従って、麻薬の処方・調剤は麻薬専門医・薬剤師の専権とされ、それ以外の個人による処方・調剤や自己使用も違法です。

治療目的の麻薬使用が認められるのは、現在、薬物依存症は無理に完治させず、依存の軽減と薬理作用の強い麻薬(強効麻薬)から弱い麻薬(弱効麻薬)への転換を目指すという軽減・転換療法が主流化していることによるようです。そのため、治療の導入段階では覚せい剤やコカインですら、少量の処方がなされる場合もあるとのこと!

こうした治療目的の麻薬の原料は、世界保健機関の下部組織である麻薬管理委員会が認定した特別農場でのみ栽培が許されており、不法に流出しないよう厳重に管理されています。また麻薬の製造・供給も世界保健機関の計画に従い、世界規模で調整されています。

このような合法的麻薬管理政策のおかげで、23世紀の世界では麻薬カルテルのような犯罪組織は一掃されているのです。ただ、麻薬を不法に栽培・所持したり、譲渡したりした者がたまに検挙されることはありますが、単発的な出来事にすぎないようです。

とはいえ、以前のたよりでも報告したように、23世紀の世界では酒・タバコが厳格に規制され、特にたばこは全面禁止されていることと対比して、麻薬合法化には釈然としない感もありますが、23世紀人に言わせれば、社会的なコストにかけては酒・タバコの害のほうがはるかに大きいとの考えに基づくのだとか。

これも時代の意識の変化ですが、たしかに、21世紀を思い出すとアルコール・ニコチン依存症者のほうが麻薬依存症者よりはるかに多く、特にタバコは非喫煙者にまで及ぶ間接喫煙の害も考慮すれば、先のコスト計算もいちおう納得です。
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by komunisto | 2015-09-16 07:18 | 衛生
2215年9月10日

そちら2015年の日本では、広域暴力団組織Y組の分裂騒動が起きたそうですが、2215年の日本に暴力団というものはそもそも存在しません。存在しないのは、警察の壊滅作戦で潰されたからではなく、自然消滅したからです。

このように犯罪組織が存在しないのは、日本に限らず、世界共通傾向です。マフィアや麻薬カルテル、黒社会などなど、世界の著名な犯罪組織はみな過去のものです。これらもすべて自然消滅しました。

その最大の理由は、貨幣経済の廃止です。日本では「暴力団」という不適切な用語が定着してしまったのですが、本来犯罪組織とは単なる暴れ者集団ではなく、非合法(一部合法)ビジネス集団だったのです。

このことは、麻薬ビジネスを専業としていた中南米の麻薬カルテルを想起すればよくわかりますが、「暴力団」と不適切に呼ばれていたY組の年収9兆円などと言われたのも、「暴力団」の経済組織としての本質を物語っています。

ある意味、犯罪組織は貨幣経済の副産物だったのです。どの犯罪組織も貨幣経済が高度に発達した資本主義社会で成長を遂げていたのも頷けます。そうであれば、革命によって資本主義社会から貨幣経済によらない共産主義社会に変革されたことで、犯罪組織の存立基盤も失われたのです。

とはいえ、革命当初は違法に私的通貨を発行して裏で貨幣経済を営む闇経済組織がしばらくは見られ、経済警察による摘発がしばしば行なわれたそうですが、計画経済を軸とする共産主義体制が確立するにつれて、そうした闇組織も消滅していったのです。

もっとも、麻薬のように経済体制のいかんを問わず、社会内に一定の潜在的需要がある法禁物については、闇ビジネスが成り立ちそうですが、そうはなっていません。その背景にある未来社会の驚きの仕組みについては次回へ。
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by komunisto | 2015-09-10 09:51 | 社会
2215年9月4日

23世紀は地球規模で貨幣経済が廃止されているのですが、一方で物々交換市場はかなり広範に存在しています。特にインターネット上の電子交換市場は内外に無数にあります。その最大級のものは、北米系のアマゾンクラという電子市場です。

クラとは、本来パプアニューギニアの経済慣習である儀礼的な交易のことで、一般的な物々交換とは概念的に違うらしいのですが、この電子市場で行なわれているのはネットを介した一般的な物々交換です。

アマゾンクラではあらゆる物品が日々交換されており、イメージとしては資本主義時代の電子市場アマゾンのようなものと考えればよいでしょう。実際、アマゾンクラは旧アマゾンを前身の一つとする企業体だそうです。

こうした海を越えた大規模な物々交換サイト以外にも、領域圏内部の大小様々な物々交換サイトが存在しており、電子物々交換はITと有史以前からの物々交換慣習とが組み合わさった現代的共産主義にふさわしいシステムだと思います。

オンライン上の電子市場とは別に、伝統的な青空市型の物々交換市場もありますが、これはどちらかというと、古着などの中古品の交換市場として活用されていることが多いようです。

これらの一般的な物々交換市場では、物々交換に供せられる物品の種類や数量が決められていることが多く、特に相手が見えない電子市場の場合はそうした交換ルールの適用が画一化されていて、交渉の余地がないため、実質上は貨幣交換に等しいとみる経済学者もいます。

ただ、個人運営の電子市場や顔の見える相対取引となる青空市場の場合は、交換ルールが画一化されておらず、何と何をどれだけ交換するかについて、個別的な交渉の余地があるようです。

ちなみに、前回のたよりでもご報告したとおり、通貨としては廃止された古物としての貨幣の物々交換市場もありますが、この場合に交換される貨幣は貨幣経済における交換媒体としての通貨ではもちろんなく、あくまでも古物としての扱いとなります。
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by komunisto | 2015-09-04 11:45 | 経済