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2216年3月26日

23世紀はもはや単なる「情報化社会」ではなく、「高度情報技術社会」あるいは「情報基盤社会」と呼ばれており、情報技術は社会の支柱です。結果、情報技術者はある意味では医療者以上に枢要な専門家となっています。

かつては業界資格的なものでしかなかった情報技術資格が、前回ご報告した医師と同様、今日では世界的に統一化された民際公的資格となっているのです。日本語では正式に「公認情報技士」と呼ばれています。

この資格はそれを取得していれば就職や昇進等で優遇されるといった業界資格とは異なり、それを取得していなければ法律所定の行為―情報専門技術処理と呼びます―を行なうことが違法となる公的資格なのです。

公認情報技士は、基礎医師免許と専門医資格が分かれている医師とは異なり、最初から各分野ごとに分化した専門資格となっています。それはまず、大きく情報処理を専門とする第一種と情報機器の機械的な構造を専門とする第二種に分かれます。

第一種はさらにプログラミング専門の第一種A類と、セキュリティー専門の第一種B類に分かれています。前者はいわゆるプラグラマーですが、後者は英語でセキュリティー・ディフェンダーと呼ばれる専門職です。

第二種は簡単に言えば情報機器の修理の専門家ですが、自ら修理するのではなく、機器の不具合の原因の特定と修理工程の指示書を発する仕事で、言わばコンピュータの医師のようなものと言えばよいでしょう。

第一種と第二種の間に上下・優劣の差はなく、対等な資格です。ちなみに、23世紀のコンピュータはすべて人工知能型ですから、コンピュータと人工知能は同義であり、いずれの公認情報技士となるにも、人工知能に関する知識は不可欠となっています。

公認情報技士試験は世界教育科学文化機関が所管し、医師免許試験と同様に、全世界一斉にエスペラント語で記述された試験問題によって実施されます。合格者は同機関及び各領域圏の公認情報技士団体の両方に登録されます。

これら公認情報技士たちは企業・団体等に雇用されるよりも、情報技術開発者や情報技術顧問として独立的に活動することが多いようです。もちろん23世紀流無償労働ですから、成功しても富豪になれるわけではありませんが。
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by komunisto | 2016-03-26 10:04 | 情報
2216年3月19日

そちら21世紀の日本では昨日、医師国家試験の合格者発表があったとのこと。21世紀初頭の段階では医師免許試験はまだ各主権国家ごと全く別個に実施されていると思いますが、23世紀現在、医師免許は世界共通です。

具体的にどのような仕組みかというと、世界共通の医師免許は、基礎医師免許と専門医免許の二段階に分かれており、医業を行なうためにはまず前提として基礎医師免許の取得が絶対要件となります。そのうえで、各専門の医療行為を指導監督なしに単独で行なうためには専門医資格が必須となりますが、今回のたよりでは基礎医師免許の件に絞ってご報告します。

医師免許は、世界保健機関の付属機関である医業監督委員会が元締め的な所管機関となっており、全世界共通の統一免許試験がここで作成されます。試験問題は23世紀の世界公用語であるエスペラントで作成され、翻訳されず、原文のまま各領域圏(国に相当)の医師連合会に委託、実施されます。

試験は5月と11月の年二回実施され、試験日は公正を期して全世界で同日に設定されます。合格すると、医師としての登録は先の世界保健機関医業監督委員会と各領域圏医師連合会の双方になされます。どちらか一方でも登録を欠くと、医業を行なうことができなくなります。

ちなみに医師連合会は、日本の旧医師会のような医師の職能的利益団体ではなく、世界保健機関と連携して活動する準公的な医療組織で、各領域圏において医師法違反事案の調査と処分の権限も持っています。

このように医師免許制度は200年で随分様変わりしたようですが、考えてみますと、医学が人類という単一の生物の病気に関する研究と治療に当たる普遍的な学術であることに鑑みれば、医師として必要な素養と技量も普遍的なものとなるはずですから、免許制度も世界共通であって不思議はないのでしょう。

23世紀の免許ないし資格には、医師のほかにも世界共通のものがいくつかありますが、次回は23世紀の高度情報技術社会を象徴する民際資格として、情報技術を専門とする情報技士という資格についてご報告しましょう。
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by komunisto | 2016-03-19 11:31 | 衛生
2216年3月12日

前々回のたより『23世紀の親子関係』が反響を呼び、その中で触れた「子ども養育官」について21世紀の読者から問い合わせが寄せられましたので、その概要を調べてみました。そのご報告です。

まず子ども養育官とは、たよりでも紹介したとおり、子ども館という地域の子ども養育機関に配置される養育の専門官であり、担当地域の基礎教育課程在籍中の17歳までの子ども一人一人に付いて成人するまで家庭外から養育に当たるスタッフです。

子ども館とは、旧児童相談所とは異なり、福祉機関ではなく、市町村が設置する養育機関です。私を含む旧世界の者にはなかなかイメージが沸かないのですが、23世紀は「子どもは社会が育てる」が基本ですから、その理念を生かす最前線がこうした子ども館であり、子ども養育官なのです。

養育官は教員ではなく、全員児童保護士の有資格者ですが、そのうえに養育官としての特別研修を受けた上位有資格者です。かれらは原則として転任することはなく、担当する子どもについては成人するまで一貫して担当します。

一人の養育官が担当する子どもの数は地域により異なりますが、最大限度20人と定められています。そのため、その数は教員よりも多いようです。それだけの数の養育官をよく養成・配置できるものだと思いますが、貨幣経済廃止により自治体も財政的制約を気にする必要がないのです。

養育官の仕事は「第二の親」とも呼ばれるように、本来の親権者とともに、家庭の外から担当する子どもを養育していくことで、担当する子どもとの定期的な面談と随時の相談、時には親権者や学校からの相談も受けます。

これはいわゆる「子育て支援」のような側面サポートとは全く異なり、まさしく「養育」の一貫であるということが特筆されます。ですから、養育官は単に子どもや親から相談に乗るだけではなく、担当する子どもの「メンター」として直接に養育するのです。比喩的に言えば、親と教師の中間のようものでしょうか。

こうした養育官の養育は原則として成人年齢である18歳で終了しますが、必要に応じて、また本人の申し出により、21歳まで延長することができます。実際、正式には養育終了した後も、養育官との関わりが事実上続くケースは珍しくないようです。

ただ、養育に「官」が直接関与することに不安が感じられないこともないのですが、以前のたより『奉仕する公務員』でもご報告したように、23世紀の「官」はかつての「役人」とか「官僚」のイメージとは似て非なるものなのです。

実際、現実の子ども養育官について言えば、私がお会いした近所の子ども館に在籍する方たちは皆、旧世界人が持つ「官」のイメージとは程遠い、ごく普通の市民のような方たちばかりでありました。
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by komunisto | 2016-03-12 11:35 | 社会
2216年3月5日

23世紀現在、労働者の働き方が大きく変化しています。その変化の中心は、労働時間の大幅な短縮にあります。そちら21世紀では1日8時間労働基準は変わらず、しかもそれを骨抜きにするような改悪で抜け道的な「残業」はかえって拡大しているとか。

こちら23世紀は1日4時間労働が基準です。つまりは、ほぼ半日労働です。但し、4時間はあくまでも「標準」であって、違反すれば罰則対象となる「上限」は6時間です。これにはさらに但し書きがついて、上限いっぱいまで労働させる事業所は、理由を付して届け出る必要があります。

一方、残業は「裁量」も含めて違法となります。つまり、労働者が好きで残業することもご法度なのです。そこまでしなくても? いいえ、そこまでしないと日本のような働き蜂社会では残業習慣はなくならなかったのです。

以上は一般的な労働の場合の原則であり、警察・消防や一部の医療関係のように24時間稼動を要求される公共性の高い労働分野では特例として6時間標準が認められています。それでも、21世紀までに比べれば短縮されていますね。

とはいえ、原則4時間では相当多くの労働者を動員する必要があるのではないかと思われるのですが、ワークシェアリングによるシフト制が多くの職場で採用されていて、昔なら一人の労働者が一日通しで担当していた仕事を二人に分けるといった場面は多いようです。

労働効率という点では一見、資本主義的オーバーワークのほうが勝っているようですが、実はオーバーワークはかえって労働者の疲弊による生産性低下の原因でした。現在、あらゆる仕事は無償労働ですから、人件費節減圧力はなく、オーバーワークならぬオーバースタッフは当たり前です。

それにしても、皆さん無償でよく働く気になるものだとは旧世界人の感慨であって、23世紀人たちは半日労働ならタダ働きでも苦にならないようなのです。腑に落ちない21世紀人もいらっしゃるでしょうが、200年という時間の経過とはそういうものです。
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by komunisto | 2016-03-05 14:38 | 経済