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2216年4月30日

そちら21世紀の社会では、災害ボランティアという社会奉仕活動が定着していて、大災害のつど、災害ボランティアが被災地に入って瓦礫処理などに従事しているでしょう。立派なことと思いますが、中には自己満足的な「迷惑ボランティア」も混じっているとか。

もちろん、多くは真摯な気持ちから参加をされていると思いますが、そうなると、まだ災害が終息していない段階で被災地入りして瓦礫処理などの危険を伴う作業に従事する善意の人たちを、「自己責任」の名のもとに使役してよいのだろうかという疑問も沸きます。

23世紀からあえて過去に口出しをさせていただくなら、災害ボランティアは一定の講習を受けて認定された人に限り、そういう「認定ボランティア」の作業中の死傷や重篤な後遺症などは公務災害に準じた補償対象とすべきではないか、と思われるのですが。

その点、23世紀の災害ボランティアは以前ご報告した建設作業隊(建設事業団)の任務として明確に位置づけられています。かれらの主要任務は建物の建設ですが、解体も担い、震災瓦礫処理などもその延長的な任務とされます。

以前のたよりでも触れたように、建設作業隊員は建設学校で養成された技術者であり、単なる善意のボランティアではないのですが、23世紀には他のすべての職業と同様、無償ですから、ある意味では「ボランティア」と言えましょう。

しかし、身分としては地方圏(道)公務員であり、その主力は常勤職ですが、日頃は別の職業に就いていて、必要に応じて招集される予備作業隊員も存在しており、災害時にはこの予備隊員も動員されるようです。

建設事業団はこのように公的組織ですので、どこにどのくらいの作業隊員を投入するかも計画的に決定されるため、21世紀の災害ボランティアのように志願者が必要以上に殺到したり、被災地のニーズに合わなくなったりする混乱はないのです。

ただし、貨幣経済ではないので、公務災害補償のような金銭補償の制度はありません。仮に死傷しても、それによって遺族や本人の生活が破綻する心配はないからです。非貨幣経済の長所はこんなところにも活きてきます。

もっとも、23世紀の日本列島は小康的な地殻安定期に入っているようで、記録的な大震災はこれまでのところ起きておらず、建設作業隊の大活躍を目にする機会にはまだ恵まれていません。もちろん、そんな機会に恵まれる不幸が起きないことを願っていますが。
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by komunisto | 2016-04-30 10:04 | 社会
2216年4月23日

以前のたよりで、自治体ごとの公共災害備蓄制度についてご報告しましたが、こうした備蓄は個人のレベルでも行なわれています。すなわち、各世帯ごとに二週間分の災害備蓄と簡易トイレ装備が配給されているのです。

21世紀までの市場経済システムでは、個人レベルでの災害備蓄は各自が商品として予め購入し、常備しておくことが推奨されていました。しかし、当然ながら、商品の購入を義務付けることはできないのが自由市場経済でもありますから、実際に災害備蓄を万全に備えている世帯は限られていました。

実際、21世紀当時の私も、災害備蓄セットの購入を検討してみたことはありますが、一式セット販売では結構高価で、かといって個別に備えると不足品が出そうな気がして、二の足を踏んでおりました。

23世紀の共産主義計画経済では、災害備蓄は事前配給制ですから、簡易トイレを含む基本セットは全世帯にまとめて配給され、家族構成に応じた衛生用品等の追加品は申請によって個別に配給されることになります。この配給を拒否することはできません。

そのことについて罰則があるわけではありませんが、仮に災害備蓄の事前配給を拒否して、いざ被災した時に改めて配給を申請しても認められませんから、配給は間接的に強制されるに等しいわけです。結果として、全世帯に二週間分の災害備蓄が常備されることとなります。

ちなみに、世帯ごとの頭数に応じた二週間分ですから、家族の多い世帯では保存食や飲料水などは結構な量になり、置き場に困るといった話も聞かれますが、だからといってあえて拒否する人はいないようです。

図式的にまとめると、自宅避難の場合→配給災害備蓄で二週間生活、二週間超過や自宅倒壊等の場合→公共災害備蓄により救援、というシステムになります。市場経済ではなかなか実現し難い合理的な仕組みだと思います。
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by komunisto | 2016-04-23 10:56 | 経済
2216年4月16日

ペット動物の形をしたロボペットというものはそちら21世紀でも開発されているようですが、まだ普及するには至らず、ペットと言えば圧倒的に生身の動物のペットが多いと思います。23世紀にはそれが逆転しています。

つまり、生身の動物をペットとする人は少なく、ペットの多くはロボペットなのです。理由としては、以前のたよりでもご報告したとおり、23世紀には動物権利法により動物の保護が格段に強化されているため、ペットの飼育に関しても厳しい法的制約があることです。

その点、機械であるロボペットは動物権利法が適用される「動物」には当たらず、毎日の餌やりすら必要なく、不要になればゴミとして廃棄することも可能なため、生身の動物に代わって普及しているようです。

しかも、ワンコ、ニャンコのような典型的な愛玩動物に限らず、ライオンとかゾウ(ゾウはさすがに等身大よりは小型ですが)のような通常は個人で飼育不能な大型動物のロボペットまで開発されていて、実際そうした大型動物系ロボペットを「飼育」している人も結構いるようです。

これらのロボペットは外見上本物そっくりに作られているので、一瞬本物の動物がいるように見えます。また動物の毛や皮膚に似た感触の素材で作られているため、触ってみても本物感覚を味わえるのが特徴です。

ロボペットは電池で動かす仕組みですが、23世紀の電池は長持ちするため、普通の使い方ならば、何年間も電池交換せずに動かせるそうです。ちなみに、スイッチを押すと、鳴き声も本物そっくりに出る仕組みを備えているので、比ゆ的に言えば、剥製動物が実際に動き出すような感覚です。

もちろん貨幣経済ではありませんから、ゾウのような大型動物系ロボペットでも無料で入手できますが、一部の量産品を除き、ロボペットは専門工房による注文生産となるため、手元に届くまでには一定の時間がかかります。
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by komunisto | 2016-04-16 11:41 | 生活
2216年4月9日

23世紀の薬局の外来語は、英語のドラッグストアではなく、エスペラント語のアポテーコ(apoteko)です。ドラッグストアからアポテーコへの変化は、単なる名称変更にとどまらない薬局そのものの性格の大きな変化を伴っています。

旧ドラッグストアは、ご承知のとおり、薬の売店であり、商品としての薬を金銭と引き換えに購入する場所でしたが、アポテーコは薬の無償供給所です。これ自体は、今までにも随所でご紹介してきたように、貨幣経済が廃された23世紀にあっては当然のことです。

より重要なことは、アポテーコでは自由に薬を選べず、必ず薬剤師と相談し、適切な薬剤を選んでもらわなければならないことです。つまり、薬剤の入手には薬剤師の関与と対面説明が義務付けられているのです。

そういうわけで、アポテーコには薬が並んでおらず、表には相談ブースがあるのみです。薬剤師と相談して薬が決まったら、裏の薬庫から取り出された薬の説明を受けて、ようやく入手完了です。(調剤薬局では医師処方薬も扱います。)

このような手順は煩わしいようにも思えますが、考えてみれば、医師の処方薬ではない薬剤でも、自分の現症状とそれに合う薬剤を素人が自身で正確に判断するのはまず不可能なことですから、薬剤師に相談することは不適切な薬剤を選択しないうえで不可欠なことなのです。

その点、以前のたより『最小限医療社会』でもご報告したように、薬剤師の専門性と権限が強化され、薬剤師も一定の診断を下し、薬を処方することが認められているので、23世紀の薬局はプチ診療所のようになっています。風邪程度なら病院よりアポテーコへ行きます。

医師が絶対的なそちら21世紀なら薬剤師のプチ医師化には不安を持たれるかもしれませんが、元来、医師と薬剤師は一体的な職能で、後から分化したそうですから、薬剤師が部分的に元の姿に戻ったと言えるかもしれません。

ちなみに、23世紀の薬剤師となるには医科学院と同等の専門職学院である薬科学院で三年間学び、薬剤師免許試験に合格しなければなりません。さらにアポテーコの運営管理者となるためにはアポテーコで通算十年以上の実務経験を要します。
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by komunisto | 2016-04-09 10:30 | 衛生
2216年4月2日

23世紀を象徴する公的な資格として、「社会調整士」というものがあります。21世紀人には聞き慣れないでしょうが、社会調整士の職務内容はそちら21世紀にもすでに存在している社会福祉士と似ています。

ただ、以前のたより『本源的福祉社会』でもご報告したとおり、23世紀には「福祉」という用語が死語に近いくらい、福祉は当たり前なので、社会福祉士という資格は廃止されています。

とはいえ、本源的福祉社会にも地域社会の課題はあり、それを調整するのが社会調整士の仕事です。23世紀の社会には政府とか役所という旧社会ではお馴染みの機関もありませんから、地域社会の課題は社会で自主的に解決しなければなりません。そのためにも、社会調整士はかつての役所に代わるような存在として重要なのです。

社会調整士になるためには、専門職学院の一つである三年制の社会事業学院を卒業したうえで、資格試験に合格後、所定の研修を修了する必要があるというように、医師並みの専門的な養成過程が課せられていることからも、その重要性がわかります。

社会調整士はいわゆる独立開業するということはなく、一本立ちした社会調整士の中心任務は地域社会事業のコーディネートであり、その拠点がほぼ市町村内の地区単位で設置される社会評議会です。

評議会には社会調整士を中心に地区住民の代表者が評議員として参加し、その地区における社会的課題とその対策を討議します。市町村域全体の政治代表機関である市町村民衆会議には各地区社会評議会議長(社会調整士)が特別代議員として参加し、市町村民衆会議にも地域の社会的課題が反映されます。

地域の社会的課題といっても、貨幣経済ではないため、いわゆる貧困問題は存在せず、障碍者や病者、高齢者など物理的な生活難を抱える市民の生活サポートが中心となります。

かつて福祉施設と呼ばれた収容型の福祉サービスも存在しませんから、障碍者や病者、高齢者などが地域で生活することは当たり前であり、社会評議会を通じたサポートの提供が「福祉」のほぼすべてなのです。
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by komunisto | 2016-04-02 12:48 | 福祉