清張再発見

この年末年始は、昨年が没後20周年だった松本清張を久しぶりに読み直して過ごしている。

かつては娯楽小説的に上滑りな読みをしていたが、改めて読み直してみると、清張は戦後日本で最高のリアリズム文学の生産者ではなかったかと感じる。

リアリズムといってもいわゆるプロレタリア文学とは明確な一線を画した、階級横断的な普遍性と娯楽性をも備えた「反骨リアリズム」といったものである。あえて欠点を言えば、リアル過ぎて耽美さゼロ、砂を噛むような文体になることも多い点だろうか。

清張作品が描く舞台は清張全盛期の昭和30、40年代が中心だが、その舞台は昭和中期の懐かしい香りを放つと同時に、主題的には今日性を失っていない。没後20年を経ても多くの作品がまだ読み継がれ、TVドラマ化も続いているゆえんである。

稀有の作家である。従って清張が得意とした推理小説の部分的継承者はあっても、歴史小説やノンフィクション作品を含めた真の継承者と呼び得る日本語作家はこれまでのところ存在しない。

海外に取材し、外国を舞台にした作品も少なくなく、広く国際的視野を備えていた点でも、日本語作家としては稀有の存在であり、海外でももっと翻訳紹介される価値があると思う。
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