介護の矛盾

介護を受ければ受けるほど弱り、要介護度は上昇していく。筆者の高齢家族も介護保険による要介護認定から1年あまりであっと言う間に歩けなくなり、オムツ生活に。介護の矛盾である。

介護は治療ではないから、状態を良くするわけではないというのが理屈であろう。だが、日本の介護は寝たきり老人を作り出すが、スウェーデンに寝たきり老人はいないとも聞く。この種の比較話にはしばしば誇張も混じるから要注意ではあるが、まんざら嘘でもなさそうだ。なぜか。

簡単に言えば、日本の介護制度は寝たきり老人の世話で民間の介護事業者が儲ける仕組みである。しかしスウェーデンのように、介護に国・自治体が責任を負う公的責任介護の制度なら、サービス依存度が高い寝たきりは財政上困る。そこで寝たきり防止策が採られる。

逆説的だが、理想の介護とは介護依存度を抑制すること、すなわち介護予防である。といっても、サービスの利用を制限するための本末転倒的な「予防」ではなく、本人の苦痛や家族の負担を軽減するために介護度上昇を防ぐことだ。少なくとも、寝たきりのような重度の要介護状態は死の直前まで延期・短縮する。

これは筋トレに象徴されるようなリハビリテーションではない。高齢者のリハビリ効果などたかが知れていよう。機能低下は加齢に伴う必然である。むしろ機能低下の先延ばし=サスペンション(suspension)こそ、真の介護である。具体的には、日常生活の場で本人と日常的な動作・作業を共にするような寄り添いヘルパーがイメージされる。

こうしたサスペンション・サービスの普及と充実は、日本の現状におけるような民間丸投げ型介護ではなく、介護の公的責任化を基本とした民間参加型介護でなくては無理だろう。
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