自然に還る

2214年4月9日

21世紀初頭の日本では、墓地不足や墓地にかかる費用が問題となり、墓無しを選ぶ人も増えていましたが、23世紀現在はどうなっているのか気になり、調べてみました。すると、23世紀人は墓に入るほうが少数派であることがわかりました。

どうしているのかと言えば、山林や海洋、河川などに自然散骨する人が多いのです。自然に還るという発想です。こうした方法は21世紀から徐々に広まっていたものの、宗教的感情がまだ強かったことや、特に山林散骨は近隣住民の反対から禁止される地域もあるなど、限定的でした。

しかし、エコロジーの思想が社会にも広く根付いた一方で、宗教の縛りからほぼ解き放たれた現在、自然に還るという終わり方はごく自然に受け入れられています。そのため、各地の山林には「散骨場」というある種の自然墓地が区画されていて、そのエリア内での散骨は完全に容認されています。

こうしたことが可能になった背景としては、現在すべての土地は誰の所有にも属しない無主物として公的管理下に置かれているという土地制度の革命的変化もあると思われます。

他方で、墓に入る人もまだいますが、墓の形は大きく変化しています。かつての画一的な四角の墓石ではなく、家や乗り物、動物など故人を象徴する様々な形をしたお洒落墓石があり、それ自体がアートになっています。

ちなみに、こうした伝統的な埋葬方法の場合、墓地の有効活用のため個別墓の保存期間が契約上限られており、通常は30年限定です。更新は可能ですが、遺族・子孫が更新しない場合、墓石と遺骨は撤去され、共同納骨堂に移転されます。

こうして、自然散骨といい、期間限定墓地といい、23世紀のお墓事情は、200年前と比べ、拍子抜けするほどあっさりした淡白なもののように見えます。これは、過去200年間における民衆の死生観の変化を物語っているのでしょう。
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by komunisto | 2014-04-09 09:00 | 死生