臨床哲学士

2214年10月5日

23世紀にはいろいろとユニークな職業が生まれていますが、臨床哲学士というのもその一つでしょう。臨床哲学史とは哲学の専門家ながら、書斎で沈思する哲学者ではなく、主に組織に所属して哲学・倫理的な問題の解決に当たる専門職です。

こうした臨床哲学士が一番活躍しているのは、病院やホスピスです。医療機関では、治療の技術的な問題ばかりでなく、哲学・倫理上の問題が現場で発生したとき、医師や看護師など医療者だけでは解決できず、苦悩する場合もあるため、臨床哲学士の出番となるわけです。

特に23世紀にはいっそう高度に発達している生殖医療の現場は倫理問題が山積するため、倫理的な問題の処理では臨床哲学士の役割が大きく、問題解決の最終責任者となります。また終末期医療でも、患者や家族からの生と死をめぐる相談に乗り、どのような終末がふさわしいか、助言もします。

現在、大きな総合病院には「臨床哲学外来」という窓口を開設している例も見られ、ここでも、心理相談に当たる臨床心理士とは別に、臨床哲学士が重大な病気の診断を受けた人や、難病の治療中の患者などからの人生相談的なことを担当しています。

そのほか、臨床哲学士の中には相談所を開設したり、自宅への出張相談をサービスしたり、自営的に活動する人もあって、これも結構利用されているようです。

臨床哲学士になるには、臨床哲学士協会が主催する講習を受けたうえで、資格試験に合格し、暫定資格認定された後、指定研修機関で実務研修を受け、最終試験に合格して初めて正式に資格認定されるという本格派の業務資格となっています。

哲学と言えば、実用至上の資本主義時代は役立たずの学問とみなされ、臨床哲学士などという職業も成り立ちませんでしたが、貨幣経済が廃された現在、社会の価値観も大きく変容し、「無用の用」(老子)としての哲学が復権しているようです。
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by komunisto | 2014-10-05 10:58 | 思考