ウィリアム・モリス

2215年3月26日

『未来社会だより』という当ブログのタイトルについて、これは19世紀英国のアーティスト・作家で社会活動家でもあったウィリアム・モリスの代表作『ユートピアだより』に着想を得たものではないかとのご指摘を21世紀の読者より受けました。

慧眼と博識に敬意を持ちます。モリスの名は21世紀には一部の人々の間でしか知られなくなっていましたので、それをご存知であったとは、相当な方です。たしかに、タイトルは同書から着想を得ました。ですが、内容はかなり違います。

モリスの「ユートピア」は、明らかに全員平等の共産主義的田園ユートピアを想定しています。それは彼が生きていた19世紀後半の英国が世界に先駆けて歩んでいた資本主義産業社会への鋭いアンチテーゼでした。

そのため、モリスの「ユートピア」は結局のところ、一人称主人公の夢幻であったことが結末で明かされます。その終わり方はいささか寂しさを感じさせ、所詮ユートピアなどかなわぬ夢にすぎないのだというペシミスティックなメッセージを読み取ることすら不可能ではありません。

これに対して、当ブログでご報告している23世紀未来社会は、これまでの通信からも明らかなように、高度な共産主義的産業・情報社会であり、農業・手工業中心のモリス的「ユートピア」とは大きく異なります。

23世紀社会は、「ユートピア」=どこにもない理想社会ではなく、23世紀の地球世界に遍く実在する未来社会、理想と現実が統一された未来現実です。それは21世紀までの資本主義産業社会と全面で対立するものではなく、旧時代の成果をもより高い次元で継承した後続社会でもあるのです。

当ブログの各通信では、そうした旧時代からの継承面と革新面とをできるだけ明瞭に切り分けて報告するよう努めてきましたので、そのあたりはある程度お読み取りいただけるかと思います。

このようなモリス的ユートピアとの相違点を別としても、モリス『ユートピアだより』は21世紀時代の私のお気に入りでした。マルクス『資本論』―こちらはある意味、資本主義的ディストピア文学としても読めます―よりも面白く感じたくらいでした。

ちなみに、23世紀の現在、モリスは作家よりもアーティストとして再発見されており、デザインの世界で「新モリス派」が形成されています。『ユートピアだより』については、民主的な農村自治体のあり方として参照されることはあるようです。
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by komunisto | 2015-03-26 09:33 | 思考