問題発見型教科書

2215年4月7日

2015年4月の日本では、中学校の全社会科教科書で領土に関する記述が増量されるなど、政府見解に沿った教科書検定が一段と厳しくなったとの不穏な報道がありました。愛国主義路線に則った教科書統制策でしょう。

少し歴史を先取りしておきますと、こうした「愛国」教科書で教育された子供たちが中年に達し、政治家や文科官僚として指導的地位に就き始めた2050年代になると、教科書統制はいっそう強化され、政府見解以外の見解の掲載禁止、政府見解に批判的な見解を教えた教員の処分など抑圧の嵐が吹き荒れることになります。

言論全般への抑圧も広がり、反愛国的言論の警察的取締りも行われました。23世紀から振り返って、革命前のこの時代は、20世紀前半期に次いで公然と思想統制が行なわれた「ネオ・ファシズム」の時代として記憶されています。

それから革命を経て23世紀に到達した現在、教科書はどうなっているでしょうか。以前の記事でもご報告したとおり、23世紀の教科書はオール電子化されており、紙書籍の教科書は過去のものです。

問題は電子教科書の中身ですが、生徒の一人から見せてもらって驚きました。昔の教科書と異なり、とても記述が簡単です。解説調の長文は一切なく、ただ必要最小限の情報が与えられ、あとは自分で問題を発見するように作られています。与えられた問題に解答せよ、ではなく、与えられていない問題を作成せよ、という趣旨です。

ここには、教育理念の革命的な変化が反映されています。すなわち、教育とは生徒に既存知識体系を暗記させることではなく、生徒自身の知の探求を手助けすることだというのです。比喩的に言えば、軍隊的行軍から森の散策への変化でしょうか。

当然、政府見解の強制などあり得ません。もっとも、以前の記事でご報告したとおり、23世紀には政府という機関はなく、民衆会議あるのみですから「政府見解」なるものも存在し得ないのですが。

こうした問題発見型教科書で教育される23世紀の生徒たちは、知的探究心と自由な創造性に富んでおり、萎縮し、ロボットのように政府見解を暗唱する21世紀の生徒たちとはまるで別の生き物のように感じられるでしょう。
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by komunisto | 2015-04-07 15:25 | 教育