2016年 04月 09日 ( 1 )

2216年4月9日

23世紀の薬局の外来語は、英語のドラッグストアではなく、エスペラント語のアポテーコ(apoteko)です。ドラッグストアからアポテーコへの変化は、単なる名称変更にとどまらない薬局そのものの性格の大きな変化を伴っています。

旧ドラッグストアは、ご承知のとおり、薬の売店であり、商品としての薬を金銭と引き換えに購入する場所でしたが、アポテーコは薬の無償供給所です。これ自体は、今までにも随所でご紹介してきたように、貨幣経済が廃された23世紀にあっては当然のことです。

より重要なことは、アポテーコでは自由に薬を選べず、必ず薬剤師と相談し、適切な薬剤を選んでもらわなければならないことです。つまり、薬剤の入手には薬剤師の関与と対面説明が義務付けられているのです。

そういうわけで、アポテーコには薬が並んでおらず、表には相談ブースがあるのみです。薬剤師と相談して薬が決まったら、裏の薬庫から取り出された薬の説明を受けて、ようやく入手完了です。(調剤薬局では医師処方薬も扱います。)

このような手順は煩わしいようにも思えますが、考えてみれば、医師の処方薬ではない薬剤でも、自分の現症状とそれに合う薬剤を素人が自身で正確に判断するのはまず不可能なことですから、薬剤師に相談することは不適切な薬剤を選択しないうえで不可欠なことなのです。

その点、以前のたより『最小限医療社会』でもご報告したように、薬剤師の専門性と権限が強化され、薬剤師も一定の診断を下し、薬を処方することが認められているので、23世紀の薬局はプチ診療所のようになっています。風邪程度なら病院よりアポテーコへ行きます。

医師が絶対的なそちら21世紀なら薬剤師のプチ医師化には不安を持たれるかもしれませんが、元来、医師と薬剤師は一体的な職能で、後から分化したそうですから、薬剤師が部分的に元の姿に戻ったと言えるかもしれません。

ちなみに、23世紀の薬剤師となるには医科学院と同等の専門職学院である薬科学院で三年間学び、薬剤師免許試験に合格しなければなりません。さらにアポテーコの運営管理者となるためにはアポテーコで通算十年以上の実務経験を要します。
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by komunisto | 2016-04-09 10:30 | 衛生