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 今回からは自由な共産主義社会における娯楽について見ていきます。娯楽と言っても様々ありますが、まずは前回マス・メディアを取り上げたことに引き続き、マス・メディアの中でも屋内で最も手軽な娯楽を提供するテレビについてです。
 

 前回も少し触れましたが、自由な共産主義社会のテレビは大手総合局の少数寡占ではなく、専門局ごとに林立します。例えば、ニュース専門、スポーツ専門、ドラマ専門、映画専門、アニメ専門等々です。従って、ケーブル・テレビやインターネット・テレビが中心ですが、地上波もチャンネルが専門ごとに細分されますから、あれもこれもと雑多な番組が流されることはありません。
 

 資本主義のケーブル・テレビは料金の負担が軽くありませんが、共産主義のケーブル・テレビは自分の好きな局だけ選択すれば、無料で見放題です。ただし、環境保全重視の共産主義社会では省エネのため、深夜早朝及び日中の数時間は放映休止となるので、一日中テレビ見放題ということにはなりません。

 

 ところで、テレビ受信機は技術革新により薄型化が進んでいますが、自由な共産主義社会では家屋の壁に埋め込み型のものが増えるでしょう。公営借家では、最初からテレビ付きで貸し出されることも多くなります。こうした備え付け型テレビは家族そろっての伝統的な団らん用と言えます。
 

 その一方で、受信機の小型化も進み、持ち運び可能なポータブル・テレビもいっそう普及するでしょう。その結果、専門局化とあいまって、自分一人で好きな局の好きな番組だけを楽しむというテレビ視聴の個人化も両立的に進みます。
 

 共産主義と聞きますと、娯楽も含めて全員一律に統制されるイメージを持たれやすいですが、決してそうではなく、むしろ収益優先の画一的なサービスが消滅することで、娯楽などは個人化されやすいと言えるのです。


 新聞・テレビ・ラジオは、自由な共産主義社会でも重要なマス・メディアであり続けますが、紙媒体としての新聞は廃れていきます。これは、地球環境保護のため製紙が計画経済により厳正に管理される結果として、書籍も含めた紙製品全体の生産が減少するせいです。

 

 その結果、紙の新聞は電子新聞に転換されていきます。自由な共産主義社会が完成の域に達した段階では、主要紙のほとんどが完全電子化されるでしょう。しかも、すべて無償提供されますから、読者登録をすれば、何紙でも同時閲読できるというメリットがあります。
 
 次に、テレビに関してですが、貨幣経済の廃止によって金儲けのための商業テレビ局というカテゴリーが存在しなくなる結果、少数の大手総合テレビ局の寡占状態は解消され、たくさんの専門テレビ局が林立するようになります。その主流はケーブル・テレビとインターネット・テレビとなるでしょう。テレビは娯楽性が強いマス・メディアですので、後に娯楽の項目で改めて詳しく取り上げます。

 

 ところで、マス・メディアにおいて取材・報道を担当するのは職業的記者(ジャーナリスト)ですが、その職業資格が曖昧なため、インターネット時代には根拠の不確かな虚偽ニュースで大衆が情報操作される危険性も増しています。
 その点、自由な共産主義社会では、報道の検閲によることなく、情報の質を間接的にコントロールするため、公認記者制度が導入されます。公認記者には市民記者/専門記者という二つのカテゴリーがあります。 
 

 市民記者は、市民記者協会が提供する一定の講習を受けた人に与えられる公認記者資格で、職業的ではないが、記者としての素養を認定された人です。市民記者はその認定資格番号を明示して記事を発信することが許されます。
 

 他方、専門記者は公的な認定試験に合格した職業的記者です。取材・報道に携わるには必ず専門記者の資格を要するわけではありませんが、マス・メディアで署名入りの記事を書いたり、氏名を明示してニュース放送したりするためには必要な資格となります。
 

 これらの公認記者が発信する記事なら絶対正確と太鼓判を押せるわけではありませんが、さしあたり公認記者による報道と無資格者が随意に流す私的ニュースとを情報の受け手である大衆が識別することで、間接的に情報の信頼性を担保することができるわけです。


 自由な共産主義社会は情報通信技術が発達した時代に対応する新しい共産主義社会ですから、インターネットのような情報通信基盤も発達しています。自由な共産主義社会におけるプロバイダーは、公益的な企業体であるインターネット事業機構に一元化されます。

 

 インターネット事業機構とは電信電話事業機構のインターネット版のようなもので、両機構は相互に業務提携関係にある姉妹組織ですが、サービス提供上、電話とインターネットは完全に分離されます。商業プロバイダーではないため、利用料金は発生しませんから、完全無料です。
 

 インターネットに接続するかどうかは各自の選択に委ねられますが、接続したい場合は、インターネット事業機構に申し込んで回線に加入すればよいだけです。当然、どの業者が一番得かと比較検討などする手間は省けます。
 

 また、貨幣経済が存在しないことで、無料公衆無線LANのネットワークも広がり、接続端末さえあれば基本的にいつでもどこでも無料で接続可能なインターネット基盤が社会的に確立されるでしょう。

 

 インターネットは「情報の自由」の象徴のような存在である反面、中傷誹謗や虚偽情報も飛び交う「情報無法地帯」の様相を呈しがちです。自由な共産主義社会のインターネットは接続遮断のような検閲によることなく、インターネットの規律監督を実現します。
 

 具体的にはインターネット・オンブズマン(以下、IO)の制度です。IOはインターネット上の通信行為を監督し、是正する独立機関であり、インターネット上での不当な通信行為(不正侵入などの技術的不正行為は除く)に関して、被害者の申立または第三者の通報を得て事案調査に当たり、司法の令状に基づく強制権限をもって削除などの是正・救済措置を行なうことができます。
 

 IOの下にはインターネット・ウォッチャーズ(以下、IW)が置かれ、24時間365日、不当なウェブサイトを監視します。IWには規制権限はありませんが、疑わしいウェブサイトを発見した場合はIOに報告し、IOが不当なウェブサイトと判断した場合は、ブラックリストに搭載し、明らかに違法な内容を含む場合は、令状を得て強制削除します。


 自由な共産主義社会における郵便サービスは、郵便事業機構が一括して提供します。郵便事業機構は、電信電話事業機構の言わば姉妹機関のようなものになります。郵便事業機構の最大の任務は郵便局の運営ですが、郵便局のあり方は資本主義社会とはだいぶん変わります。

 

 まず窓口業務は無人ロボット化され、人間のスタッフは案内員、警備員とシステム管理者くらいになります。郵便サービスも無料ですから、窓口で郵便物の重さを量って料金を徴収するスタッフも必要なくなり、ロボットによる機械的な受付処理で十分なのです
 
 また、貨幣経済が存在しないため、郵便局のもう一つの事業であった貯金のような金融業務はそもそも存在せず、郵便局の業務は純粋な郵便事業に限られることになります。

 

 ところで、自由な共産主義社会では貨幣経済は存在しないとはいえ、物々交換は存在します。物々交換は昔ながらの青空市場で行なわれることもありますが、電子化時代にはインターネットを介した電子物々交換が盛んになります。これは、言わば共産主義的な「通販」です。
 
 その他、通信で様々な物品を無償提供するサービスも存在し、これらを総称して「通信配送」と呼ぶことができます。資本主義社会ではこうした通信配送は郵便の他、全国規模の宅配便会社などが請け負うわけですが、自由な共産主義社会における宅配便会社は地域限定の短距離配送しか行わず、全土及び海を越えた配送は郵便事業機構がサービスを提供します。
 
 もっとも、貨幣経済が存在しない以上、「買い物」という行為もないので、「通販」を含めた通信配送は資本主義社会ほどには盛んでなく、消費事業組合からは入手できない希少な物品の取り寄せなどに利用される程度で、宅配便はさほど頻繁に利用されることはないでしょう。


 今回からは、自由な共産主義社会における情報通信に関してです。情報通信分野で最も普及・使用頻度が高い手段は何と言っても電話でしょう。電話にも固定電話と移動電話(携帯電話)の二種類がありますが、自由な共産主義社会ではどちらも電信電話事業機構が一括してサービス提供します。

 
 電信電話機構は生産事業機構の一つであり、全土的に無料で電話サービスを提供します。ただし、固定電話は通常の連絡手段としてばかりでなく、公共サービスへの連絡用として全世帯に一台ずつ貸与されます。
 この公共連絡用電話とは各種緊急通報をはじめ、主要な公共サービス提供機関への連絡用に設定された直通電話であり、電話番号を調べたり暗記したりすることなく、必要なサービス機関に一発で連絡可能なサービスです。

 
 私的な連絡手段として使われる携帯電話の所持は各自の自由ですが、情報通信機器は大量廃棄による有害な電子機器ゴミを抑制するため、計画経済に基づく計画生産がなされるため、新品の入手は原則として3年ごとに限定され、それ以外は中古機器の貸与サービスとなります。

 
 固定電話より公共性の高い電話サービスとして、公衆電話もあります。公衆電話は携帯電話の普及に伴い消滅する運命にあるというのは資本主義社会の話で、自由な共産主義社会では公衆電話サービスは重要な公共サービスの一つとして復活します。
 
 公衆電話は携帯電話が不通となりやすい災害時などにも備えた軽視できない社会的通信インフラです。そればかりでなく、携帯電話の操作が難しい障碍者にとっても、時として死活的な通信手段となることがあります。そうした点で、公衆電話サービスは非常時や障碍者にとっての不自由さを除去するという意味で、まさに「自由な」共産主義社会における重要な公共サービスなのです。
 
 貨幣経済にとらわれない共産主義的な公衆電話サービスは金銭的コストをかけずしてハイテク化が可能となり、電話帳のような煩雑で旧式な検索方法に代え、電話機のハイテク化により画面上で必要な番号検索ができるようになりますし、視覚障碍者向けに音声で番号入力が可能な機能も備えたハイテク公衆電話も実現するでしょう。